認知症および軽度認知障害(MCI)の現状
厚生労働省の発表資料によると、2022年の65歳以上の高齢者における認知症者は約443万人となっており、65歳以上の高齢者の約12%を占めています。また軽度の認知症と診断された人も約559万人おり、65歳以上の高齢者の約16%を占めている状態です。
そして今後問題視されているのが2040年問題です。2040年問題とは、団塊世代の子ども世代が65歳以上になり、そのときには認知症の患者数が約584万人に上ることで、その数は65歳以上の高齢者の15%を占めるといわれています。
人生100年時代そして少子高齢社会をむかえ、認知症患者は今後さらに増加するといわれていることからも、認知症に対する問題はもはや他人事ではなくなってきています。
家族に財産を管理してもらう家族信託
認知症になると、本人に判断の能力がないと見なされ、銀行口座は凍結されてしまいます。そうなると家族でも登美子さんのお金を引き出すことはできません。いくら自分が認知症になったときのためにとお金を貯めていても、結局家族は使えないことになってしまうのです。
家族信託とは、本人の財産を管理する方法の一つで所有権を「財産権(財産から利益を受ける権利)」と「自分の財産を管理もしくは運用、処分できる権利」に分けて、後者を子どもに託す契約です。そのため、登美子さんの財産から得た利益は登美子さんしか受け取れません。
家族信託を利用することで、登美子さんが今後認知症になったとしても、子どもに財産の管理や運用を任せることができるのです。
家族信託は、契約を締結する必要があり、その際には
- 委託者:財産について信託する人(登美子さん)
- 受託者:財産の管理や運用、処分などを行う人(登美子さんの子ども)
- 受益者:財産から得られる利益を受け取る人(登美子さん)
と3つの役割に分け、財産の管理方法や運用、処分方法について話し合い、その内容を契約書にまとめる必要があります。
また、家族信託で委託できる財産は「現預金」「不動産」「生命保険」「有価証券」と決めあれています。
家族信託を利用することにより、賃貸物件を経営している親が子どもに経営を任せることができますし、自分の口座のお金を治療や介護費用にあてることも可能になります。
また、家族信託は認知症だけに当てはまる問題ではありません。たとえば、子どもが知的障害を持っている場合、自分たちが亡くなったあとは兄弟などにその子どもの財産管理を任せるといった使い方もできます。このような使い方は障害のある子どもを持つ親にとってはとても有効な方法ではないでしょうか。
ただし、家族信託では財産の管理や運用、処分する権利のみを委託されます。そのため、今後仮に施設への入居などが必要になったとき、登美子さんが契約当事者となる契約を子どもたちが結ぶことはできません。ここで必要になるのが成年後見人です。
杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>