エリート街道爆走、メガバンク入行後もそつなく仕事をして退職
川本清さん(仮名:69歳)は国立大学を卒業し、メガバンクに入行しました。その後も順調に昇進し、60歳で退職したときには、退職金やそれまでに貯蓄や投資信託で増やした資金を合わせた4,000万円があったといいます。
退職後も65歳までは関連のクレジットカード会社で働くことが決まっていた清さん。収入は下がりますが、その期間は妻もパートで働くと言ってくれたので、生活レベルを下げるほどの支障はありません。
65歳当初からもらえる年金額は夫婦合わせて月30万円程度ですが、その一部は企業年金のため、75歳からは月25万円に下がってしまいます。そうなると生活レベルを下げなければなりません。
そのため、清さんは75歳から年金額が減っても生活レベルを保てるよう、老後資産のうち3,000万円を投資信託で運用し、効率的に増やすことを心がけていました。
証券会社の代理店で働いている同期からの営業
清さんが関連会社で働くようになったある日、同じ60歳で退職し、証券会社の代理店に勤めている同期から連絡がありました。利率の高い「仕組債」を購入しないかというのです。
仕組債とは、国債などの債券とは異なり、取引を行う「スワップ」と、事前に決めた価格で売却できる「オプション」が組み合わさったものです。もともとは富裕層向けに販売されていた商品ですが、近年では100万円単位で購入することができ、購入対象の枠が広がっています。
清さんが進められた仕組債は、「EB債(他社株転換社債)」というもので、パンフレットには「利回り年5%」と記載されていました。
仕組債(EB債)には、ノックアウト水準とノックイン水準そして判定日が設定されており、仮に判定日に指定された株価が当初の105%になったらその時点でノックアウト(早期償還)されます。また、株価が当初価格の70%を一度でも下回った場合、満期時には現金ではなく対象となる株券が戻ってくるという特徴があります。
満期までにノックアウト水準およびノックイン水準どちらにも達しなかった場合、満期までに定期的に利息が受け取れるほか、満期時には元本が戻ってくる仕組みです。
ノックアウト水準とノックイン水準は発行される仕組債(EB債)によって異なりますが、清さんは試しに100万円だけやってみようと、同期の誘いに応じたのです。
清さんが購入したのは、対象の株式銘柄が日本の大手化粧品会社の仕組債(EB債)で、1年満期のものでした。ノックアウト水準は105%、ノックイン水準は60%です。大手化粧品会社なら株価もそこまで下がることはないだろうと思ったことが購入の理由でした。
そして清さんの予想どおり、満期までに利息を4回(合計5万円(税引き前))受け取り、100万円が戻ってきたのです。
これに気をよくした清さんは、その後も同期が紹介してくれる仕組債(EB債)を購入し、ノックアウトを経験したことが数回あるものの、運用実績はすべてプラスに転じていました。
そして、次に紹介されたのが外国の株式を対象銘柄とする仕組債(EB債)です。日本の株式を対象としたものよりも高い利回りが魅力に思えた清さん。
その頃、海外の株式の多くが右肩上がりになっていることもあり、満期までの期間が半年と短いものの、仮にノックアウトしてもその期間までに得られる利益が大きいと判断し、外国株式を対象とした仕組債(EB債)を複数、合計2,000万円ほど購入し様子を見ていました。平均利回りは年10%です。購入資金はそれまで保有していた投資信託の一部を売却して工面したそうです。
