「お母さんは毒親だったのでは?」募る母への恨み
9月に70歳の誕生日を迎えた登美子さんは最近自分でも物忘れがひどくなっていることに危機感を覚えていました。実は登美子さんには同じ市内の老人ホームに入居している94歳になる母親がいるのですが、認知症で意思表示が困難な状態。母親が暮らしていた実家は登美子さんが管理しています。
近所の人からは孝行娘として知られる登美子さんですが、実は母親のことを恨んでいました。登美子さんの母親は当時の女性としては珍しく東京の医学専門学校を卒業した看護師で、バリバリと働いていました。そんな母親から登美子さんは厳しく躾けられました。そして、高校を卒業したら東京の大学に進学したいと希望した登美子さんに母親は猛反対。
「地元の短大しか進学は認めない」と言われ、泣く泣く登美子さんは地元の短大に進み、お見合い結婚しました。何かと厳しかった母親への積年の恨みは募るばかりですが、世間体もあってイヤイヤ母親の世話をしているという状況です。
登美子さんは密かに「うちの母親は今で言う毒親だったのでは?」と思うことがあります。
登美子さんには2歳年下の妹がいるのですが、母親の自分への接し方と妹への接し方は明らかに違いました。妹は東京で暮らしているのですが、自分勝手なところは母親にそっくりで登美子さんの苦労も知らず「お姉ちゃんはお母さんの遺産を狙っているんじゃない?」と言ってくる始末。
もともと姉妹の仲はよくなかったのですが、母親が死んだあとは揉めることは必至で、登美子さんは気が重くなるのでした。
そんな事情もあって登美子さんは自分の将来についても心配になってきました。日に日に弱っていく母に自分の将来の姿が重なります。登美子さんの夫はすでに亡くなっていますが、登美子さんには2人の娘がいます。
「最近は物忘れもひどいし、いつ認知症になってもおかしくない。自分が死んだあとも娘たちが遺産のことで揉めないように今のうちに対策をしておこう」と思い立ち、専門家に相談することにしました。
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