「運用の価値」と同時に「節約の意味」を考えさせる複利思考
ウォーレン・バフェットは10歳の頃に『1,000ドル儲ける1,000の方法』を読み、大いに感銘を受けています。1つは「幸運を待つのではなく、自ら動き始める」ことですが、もう1つが「複利の考え方」についてです。
こんな計算をします。
「仮に1,000ドルから始めて、年利10%だとすると、5年で1,600ドル以上になる。10年では2,600ドル近くになる。25年では1万800ドルを超える」
たとえ最初は大きなお金でないとしても、複利だと歳月が経てばそれなりの大きなお金になります。仮に100万円を金利7%の半年複利で10年間運用すると約200万円、つまり元金が倍になるわけです。
今の時代、預貯金でこんな金利は望むべくもありませんが、日本がバブル景気に沸いていた1980年代後半から90年代初め頃には7%の金利は現実にあり、当時は「10年預ければ倍になる」と普通に言われていました。
バフェットは「複利」を使えば、雪山で雪の玉を転がすように、お金がお金を生み、10年20年後にはとても大きなお金の塊になることを知り、「35歳までに100万長者になる」ことを現実のものとして考えるようになります。
今日の1ドルも大切にして上手に運用すれば何年か後には10ドル、20ドルになる、というのがバフェットの複利式の考え方ですが、これは「運用の価値」を教えてくれると同時に「節約の意味」も教えてくれました。
自分の家を買うこと=「バフェットの愚行」…そのワケ
やがて成長して結婚して2人の子どもが生まれたバフェットは、生まれて初めて一軒家を購入します。
既にかなりの資産を築いていましたから、決して無理な買い物ではありませんでしたが、価格の3万1,500ドルは、バフェットの頭の中では100万ドルに等しい買い物でした。当然、家具なども買いそろえるだけに、バフェットはこの買い物を「バフェットの愚行」と名付けます。
その後も妻が何かを買いたいと訴えると、「そんなことで50万ドルをふいにするのはどうかな」と答えるありさまでした。
さらにバフェットは妻だけでなく、自分自身の散髪にさえこう自問します。「本当に私はこの散髪に30万ドルを費やしたいだろうか?」「散髪に30万ドル」というのは意味が分かりませんが、たしかにバフェットにとってはわずかな散髪代さえ、10年、20年、30年と運用すれば30万ドルになるほどの大金だったのです。
お金を運用するとか、複利で増えると考えれば、たしかに目の前のお金は「今の価値」ではなく、長期的には「大きな価値」を持つことになるのです。
バフェットのルール
複利の視点で考えれば「今のお金」の価値は長期的には違って見えてくる。
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト