バフェットの歴史で上位に来る失敗とは
投資におけるリスクを抑えるためには「価格と価値の差」を冷静に見極めることが重要であり、「十分な安全域」を確保しなさいというのがウォーレン・バフェットの考え方です。
では、企業の価値よりも価格が低ければそれでいいのかというと、もちろんそうではありません。
バフェットは「世界一の投資家」であり、年単位での損失を出したことはありませんが、現在、経営しているバークシャー・ハサウェイに関しては本人の歴史の中でも上位に来る失敗をしています。
1965年、バフェットは繊維会社だったバークシャー・ハサウェイを見て、利益が出ない、倒産しそうな会社ではあるものの、企業価値よりも株価がはるかに安いため、「安いし、心底欲しい」と思ったといいます。
当時、バフェットはグレアム譲りの「バーゲン株買い」にとらわれており、同社はそれにぴったりの会社でした。バフェットは「ひと吸い分だけ残っているかもしれない」と信じて同社の経営権を取得しますが、実際には「一服できる分は残っていなかった」のです。
それでも何とか会社を立て直そうと努力しますが、1985年についに繊維部門を閉鎖、400人の工員を解雇、機械設備一式を16万ドル余りで売却することになります。
こう振り返りました。
「バークシャー・ハサウェイの名前を耳にしなかったら、今ごろ私はもっと裕福だっただろうね」
有能な騎手も名馬に乗れば勝てるが、骨折した駄馬では勝てない
ここでの苦い経験を経てバフェットは、経営状態は良くないが、資産に比べて株価が極端に安い企業に投資する「バーゲン買い」「シケモク買い」から、資産に比べて株価が高かったとしても、優れた事業で、優れた経営者がいる事業への投資を重視するようになります。
特に大切なのが「優れた事業」であることです。バフェットは言います。
「有能な騎手も名馬に乗れば勝てるが、骨折した駄馬では勝てない」
どんなに優れた経営者であっても、事業内容が良くなければ、再建は難しいものです。反対に優れた事業であれば、時に「愚かな経営者」が登場したとしても、致命傷にはなりにくいものです。
投資では誰しも損失など出したくないものですが、だとすれば余計に目先の株価よりも、事業の中身に注目することが必要です。
優れた事業を優れた経営者が率いるのが理想ですが、もしどちらかを選ぶとすれば、「優れた事業」に注目することがリスクを小さくして、投資で成功する秘訣と言えます。
バフェットのルール
株価にばかり気を取られるのではなく「事業」に目を向けよう。
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト