成功者の真似をすれば成功できるのか?
ユーチューブなどで「私はこうやって株で大金を手にした」といった内容のものを見て、つい「うらやましいなあ、自分もこの人の真似をしてみよう」と思ったことはないでしょうか。
なかには「こうすれば絶対にうまくいく」と自慢げに語る人もいて、つい乗せられる人もいるかもしれません。ウォーレン・バフェットはこうした衝動にストップをかけています。
「先週誰かがやってうまくいったとして、今週自分がやって成功するとは限りません」
パナソニックの創業者・松下幸之助はかつてある人から山岡荘八の小説『徳川家康』を勧められます。同著はベストセラーとなり、「経営者なら読め」と喧伝されるほど人気の作品でした。
しかし、松下は「僕はあかんと思う」と答えます。理由をこう説明します。
「ためになるからということで読んで、その通りやると、これはえらい失敗をする。松下と家康は違うんだ。家康も僕の通りやったら失敗するだろうし、僕も家康の通りやったら失敗する」
「みんながやっている」は成功よりも失敗を引き寄せる
徳川家康など何の役にも立たないと言っているわけではありません。松下によると、経営のコツというのは、ただ1種類しかないわけではなく、人によってみな違います。
「千種も万種もあるよ」が松下の考えであり、さまざまな理論やアドバイスもきちんと耳を傾けるものの、どうするかは自分で考えて決めるというのが松下のスタイルでした。
バフェットも同様です。バフェットの基本は「自分の頭で考える」であり、「自分がよく知る、理解できる企業に投資する」ことです。時にバフェットのやり方は「時代遅れ」と批判されることもありましたが、「みんなが賛成している」からといって、いつもそれが正しいとは限りません。
「みんなと同じ」ではなく、あえて「みんなと違う」ことをするのもバフェットです。但し、そこには「なぜその企業に投資するのか」という確固たる理由があるだけに、周りが何を言おうと、周りがどんな株を買おうと、まるで関係ありませんでした。
成功者に学び、成功者を真似ることが悪いわけではありません。しかし、株式投資の場合、「みんながやっている」「私の言うとおりにやれば絶対に成功できる」というキャッチフレーズは、成功よりも失敗を引き寄せることも少なくありません。
打席では振らされるより、自分の意思で振る方がいいのです。
「先人に学ぶのはいい、しかし、誰かの真似をしたからと絶対の成功はない。」
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト