“外国人”の身柄拘束ばかり報道されるが…中国当局の「スパイ容疑」による身柄拘束に最も心中穏やかでないのは「中国本土の中国人」である事情

“外国人”の身柄拘束ばかり報道されるが…中国当局の「スパイ容疑」による身柄拘束に最も心中穏やかでないのは「中国本土の中国人」である事情
(※写真はイメージです/PIXTA)

2023年、中国当局によって「スパイ容疑」で身柄を拘束された日本人男性社員が、今年起訴されたのは記憶に新しいでしょう。報道される機会が多いため外国人の身柄拘束ばかりが注目されがちですが、実際には中国本土の中国人が最も多く中国当局によって拘束されているようです。本記事では、中国法に詳しい村尾龍雄氏の著書『中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、中国で起きたスパイ容疑による身柄拘束の事例から、中国本土の状況について詳しく解説します。

一番多く身柄拘束されているのは中国本土に住む中国人

一見、中国では外国人ばかりが身柄を拘束されているように見えます。しかし、数の比からしても当然ではありますが、身柄拘束者が最も多いのは中国人なのです。服役中の待遇も、外国人と中国人とでは大きな差があります。

 

そのため、実は一番心中穏やかならざる思いでいるのは、中国本土に暮らす中国人であると言っても過言ではありません。

 

2016年、中国の軍事情報を外国に送信した中国人の男がスパイ罪を理由に懲役7年の実刑判決を受けていたことが報道されました。この中国人は2012年から翌2013年にかけて、浙江省寧波市の中国人民解放軍東シナ海艦隊の関連施設や停泊する艦船の写真を外国の情報機関に送っていたといいます。

 

この男の携帯電話からは多数の軍事施設の写真が見つかっており、機密級の軍事情報も含んでいたことや、当時は尖閣諸島をめぐって東シナ海海域で緊張が高まっていた時期でもあったことから、国家安全に深刻な脅威をもたらすとして実刑判決となったようです(2016年4月21日付産経新聞より)。

 

2023年2月、光明日報で論説部副主任をつとめていた中国人の幹部が、日本人外交官と昼食中にスパイ罪の疑いで中国当局に拘束された事例もあります。

 

その後、複数の日本人外交官に情報提供した罪にも問われ、起訴されましたが無罪を主張しています。この人物は日米ジャーナリストや研究者、外交官などと親交があり、日米の大学に客員として招かれたこともあるそうです。

 

このとき、中国当局は昼食をともにしていた日本大使館の職員を一時拘束して取調べを行っていました。しかし、これはウィーン条約で外交官に認められている不逮捕特権(刑事事件でいかなる訴追や身柄拘束も受けない権利)の侵害にあたる行為であったため、日本政府が厳重抗議をしています(2023年4月25日付朝日新聞より)。

 

ちなみに、このような日本の外交官またはそれに類する地位の人物と交流していた民間人がスパイ容疑のために身柄拘束される事例が近年相次いでいます。

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※本連載は、村尾龍雄氏の著書『中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門

中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門

村尾 龍雄

幻冬舎

スパイ容疑から身を守る! 安心して中国でビジネスを行うために―― 拘束・逮捕のリスクを回避するための知識を網羅! 日本にとって最大の貿易相手国である中国には、仕事などで滞在している日本人が10万人以上いますが…

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