海の近くで写真撮影すると「スパイ行為」と見なされることも…中国で実際に起こった“国家秘密漏洩”による処罰事例

海の近くで写真撮影すると「スパイ行為」と見なされることも…中国で実際に起こった“国家秘密漏洩”による処罰事例
(※写真はイメージです/PIXTA)

中国で近年増加している「スパイ容疑・スパイ罪」による逮捕。その気がなくとも、観光目的で写真を撮ったことが「スパイ行為」とみなされてしまうことも……。そこで本記事では、中国法に詳しい村尾龍雄氏の著書『中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、写真撮影によってスパイ容疑・スパイ罪として逮捕された事例から、中国を訪れて写真を撮る際に注意すべきポイントについて詳しく解説します。

ビーチでの写真撮影に関する処罰事例

境外のために国家秘密を偵察し、不法に提供した事件

2019年7月、結婚写真のカメラマンだったAは、WeChatである海外の女性と知り合った。

 

その女性の指示のもと、2019年7月から翌年2020年5月までの間、Aは軍港近くのビーチで結婚写真を撮影する機会を利用して、専門の撮影機材や携帯電話などで、軍港周辺に停泊する軍艦を遠くから撮影した。

 

また、(自分が軍艦等の撮影をしていることの)発覚を避けるため、他人をだましたり、金銭で誘惑したりしてこの軍港付近の湾岸の全景を撮影するよう依頼した。

 

Aは週2~3回の頻度で、合計90回以上撮影したため、軍港や軍艦に関する写真は384枚にものぼった。撮影した写真はクラウドストレージやグループ共有などの方法で海外にいる相手方に送信し、相手方から4万元(約88万円)あまりの報酬を受け取った。

 

(国家安全機関が)これらの写真を鑑定したところ、事件の関連写真には絶対秘密級の国家秘密にかかわるものが3件、機密級の国家秘密にかかわるものが2件あった。

 

最終的に、Aは境外の人員等のために国家秘密を偵察し、不法に境外に提供した罪を犯したことにより、有期懲役14年、政治的権利剥奪5年の刑に処せられ、違法に取得した個人財産4万元(約88万円)も没収された。

 

アドバイス:

  • 海の近くで写真撮影をすると、背景に軍事施設付近の景色が写り込んでしまうことがあり、スパイ行為と評価される可能性があるため危険です。

参考:「检察机关依法惩治危害国家安全犯罪典型案例」

次ページ軍港付近の風景などの写真の提供をめぐる処罰事例

※本連載は、村尾龍雄氏の著書『中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門

中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門

村尾 龍雄

幻冬舎

スパイ容疑から身を守る! 安心して中国でビジネスを行うために―― 拘束・逮捕のリスクを回避するための知識を網羅! 日本にとって最大の貿易相手国である中国には、仕事などで滞在している日本人が10万人以上いますが…

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