スパイ容疑で起訴されると「死刑判決」が下ることも
日本国内で外交官と民間人が交流する分にはまだいいのですが、中国でそれをすると民間人のほうがスパイ容疑をかけられてしまうのです。
外交官には不逮捕特権があるので、外交官が身柄を拘束されることはほぼないと言ってもよいのですが、民間人はそうはいきません。
このことを知らないはずがないのに、他省庁から大使館や総領事館に出向している日本の外交官の身分を有する者を含め、情報収集をしようと民間人にうかつに近づくために、民間人が犠牲になっているというケースも多々あるのです。
外交官として中国に派遣される外務省および他の省庁の職員には、中国であれ日本であれ中国に駐在し、または頻繁に渡航する民間人と必要以上にコミュニケーションを取るのは控えていただきたいと強くお願いしたいところです。
スパイ容疑をかけられるのは中国本土やその周辺地域にいる中国人だけではなく、外国に移住して帰化した元中国人も同様です。中国からオーストラリアに渡り、帰化した男性が、2019年にビザ取得のために妻子とともに中国へ渡った際、中国当局にスパイ容疑で拘束され、執行猶予付きの死刑判決を受けました。
彼は国家安全部に勤務経験がありますが、その後オーストラリアへ移住して作家となり、中国の国家問題に関してブログを書いたりスパイ小説を出版したりしていました。その後、中国を訪問した際に中国当局に拘束されて死刑判決まで受けたのです。
このように国家安全部や外交部など国家秘密に恒常的に触れ得る公務員の地位を有しており、または過去に有していたものがスパイ容疑で起訴されると、死刑判決が下されることが多々あるようです。ただし、執行猶予付きなので、2年後には終身刑に減刑される可能性はありますが、健康状態が懸念されているようです(2024年2月5日付Bloombergより)。
※中国の死刑制度には執行猶予制度があり、死刑判決を受けて2年間故意犯罪がなく、刑務所での態度が良好であれば無期懲役に減刑されます(刑事訴訟法第261条)。