郊外で写真を撮っただけで「スパイ容疑」で逮捕?中国でスパイ扱いされないために知っておくべきこと

郊外で写真を撮っただけで「スパイ容疑」で逮捕?中国でスパイ扱いされないために知っておくべきこと
(※写真はイメージです/PIXTA)

近年中国で増加している「スパイ容疑・スパイ罪」による逮捕。観光に来ていただけだとしても、不用意な行動が「スパイ行為」とみなされて逮捕されてしまう可能性は否定できません。そこで本記事では、中国法に詳しい村尾龍雄氏の著書『中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、実際に郊外を訪れた外国人が逮捕・処罰された事例から、中国を訪れた際にスパイ容疑・スパイ罪で逮捕されないための注意点を詳しく解説します。

郊外を外国人が訪れるときに注意したい事項に関する処罰事例

軍部隊の駐屯地で秘密を探る疑わしい人物を発見

2021年8月20日、汕尾市のとある村の幹部2人が仕事中に、村委員会の入り口に挙動の怪しい外来者2人がおり、そのうち1人が村委員会の公告欄を撮影していることに気づいた。

 

村の監視カメラを見てみると、この2人の男は緊張した面持ちで周囲を見回しながら写真を撮るなど、行動がおかしい様子だった。村幹部の2人は日頃から国家安全知識に関する研修をよく受けており、それに関する意識が比較的高いほうであったので、すぐにあることを思い出した。

 

それは、境外のスパイ機関がわが国(中国)の境内の人間と結託する方法、すなわちスパイが結託した相手に指図し、軍部隊の活動場所の周辺に出向いて部隊の演習公告等の公開情報を撮影させることがあることだ。

 

その村はちょうど軍事基地の近くにある。村幹部は、「この2人の男がスパイ・機密情報の窃取活動に従事している可能性がある」と思い至ったため、撮影者に身元と公告欄を撮影した理由や用途を問いただした。

 

2人の男は、「クライアントの委託を受けて状況把握をするために村に写真を撮りに来た」と話した。村幹部がさらに追及したところ、2人の男が委託されたという会社の名前や状況をはっきり話すことができず、ずっと言葉を濁していたため、村幹部の疑惑はさらに深まった。

 

そこで、村幹部の1人が2人の相手をしている間に、もう1人の幹部は速やかに近くの武装部および派出所に報告した。その後、派出所の警察官が現場に到着し、男2人を派出所に連行した。

 

取り調べたところ、男2人のうち1人は国家安全機関が捜査中の事件の犯罪被疑者だった。現在、その男は境外のために国家秘密を偵察し、不法に提供する罪に問われてすでに逮捕されている。

 

村幹部の1人は「村幹部であれ、村民であれ、誰にでも国の安全を維持・保護する責任があります。国の秘密が漏洩すればより大きな危害を招くでしょう」と話した。

 

彼らは、「国家安全知識の学習が非常に重要である」と呼びかけるとともに、軍部隊の訓練の情報や場面を撮影しないよう注意を促している。その村では、国家安全知識の研修教育を今後も強化する予定である。

 

アドバイス:

  • 公告欄の情報には、軍の部隊に関する情報が書かれている場合がありますので、特に秘密にされていない公告欄を撮影するだけでもスパイ行為と疑われる危険があります。
  • 往訪する場所が軍事基地の近郊でないかどうかを事前に確認するとともに、現地の人に往訪目的を明確に説明できるようにしておきましょう。

参考:「南海发现可疑电子设备!广东国安机关公布三起典型案例」

 

 

村尾 龍雄

キャストグローバルグループ

CEO

 

※本連載は、村尾龍雄氏の著書『中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門

中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門

村尾 龍雄

幻冬舎

スパイ容疑から身を守る! 安心して中国でビジネスを行うために―― 拘束・逮捕のリスクを回避するための知識を網羅! 日本にとって最大の貿易相手国である中国には、仕事などで滞在している日本人が10万人以上いますが…

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