(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、マネックス証券株式会社が2024年9月30日に公開したレポートを転載したものです。

経済政策全般について当面は岸田政権のスタンスを継承

では増税論はどうか。これは岸田政権のときに市場の拒否反応を経験しているので、同じ過ちを繰り返すとは思えず、早晩、増税の主張を封印するだろう。石破氏は岸田政権の資産運用立国などの方針は継続すると表明しており、経済政策全般に当面はドラスティックなものは出てこないと思われる。

 

その背景は2つ。いちばん大きいものは、石破氏の勝因は「岸田派」の票が回ったからという点である。今回の総裁選は「派閥なき総裁選」と謳われたものの、結局、決め手になったのは「派閥」の力だった。石破氏は岸田さんの政策を継承するしか選択肢はなく、岸田政権で最も成功とみなされる資産運用立国の方針に水を差すような真似はできないということだ。

 

次に、今回の総裁選はそもそも自民党の人気が凋落し、このままでは選挙を戦えないので選挙の顔となる看板を変えようというのが趣旨だ。選挙をにらんでの人気回復が至上命題であり、国民に不人気な政策は(少なくともすぐには)実行しないだろう。金融所得課税は一部の富裕層だけが対象になるので、数を重視するポピュリズムでは問題にならないという面もある。しかし、いまや新NISAやイデコなどで投資が広く一般にも普及している。金持ちを叩いても人気取りにはならず、それで株式市場を下落させれば、かえって一般大衆の人気も失うのである。そのあたりのことはわかるだろう。

 

よって石破氏は、経済政策については岸田政権の政策スタンスを継承し、当面はなにも行わず、本人の思い入れがある地方創生と防衛に注力するものと考える。

 

まずは「国民に信を問う」衆院選で自民党がどのような勝ち方(負け方)をするか、それを見極めることが肝要だと思われる。

 

 

広木 隆

マネックス証券株式会社

チーフ・ストラテジスト 執行役員

 

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