悠々自適な老後が一転…愛する夫の死に、妻はショック
そんな理想の老後を過ごしていた2人でしたが、道子さんが70歳のとき、状況が一変します。夫の敏夫さんが、病に倒れてしまったのです。1年間の闘病の末、敏夫さんは他界してしまいました。
周囲からも「おしどり夫婦」と呼ばれるほど仲がよかったことから、道子さんは大きなショックを受けます。なんとか葬儀を終えると張り詰めていた気持ちが一気に萎えてしまい、しばらく無気力状態が続きました。
抜け殻のようになってしまった道子さんを娘は心配し、少しでも前向きな気持ちになればと、スポーツクラブやカルチャーセンターに通うよう勧めてみたそうですが、元々社交的な性格ではなかった道子さんは、気乗りしない様子だったといいます。
心配ではありましたが、娘は隣県に住んでいたため、頻繁に道子さんを訪ねることはできません。ときどき電話で母の様子を確認していましたが、当時、道子さんに持病はなく、金銭面の心配もなかったため、娘は「時間が経てば元気になって、元のお母さんに戻ってくれるだろう」と楽観視していました。
娘の“嫌な予感”が確信に変わった「母からの電話」
しかし、ある日の出来事をきっかけに、娘は“嫌な予感”がし始めます。
それは敏夫さんの一周忌で、久しぶりに親子が顔を合わせたときのことです。娘は、道子さんの表情がいつもと違うなと感じたそうです。なんとなくぼんやりとして、表情に締まりがないように見えます。
それでも、話しかけるといつもの母です。孫の様子を気にかけてくれるなど大きく変わった様子もなかったため、娘はどこか違和感を覚えつつも、「年齢も年齢だし、疲れているのだろう」と思うことにしました。
しかし、その後しばらくして、その「嫌な予感」は確信に変わります。
ある日娘の携帯に、1本の電話が入りました。出てみると道子さんからで、ひどく動揺している様子です。
「助けて! 泥棒に入られたかも。印鑑と財布がないの」。
娘はとりあえず母親を落ち着かせ、思い当たる場所を電話口で指示したところ、事なきを得ましたが、その後、昼夜問わず似たような電話がかかってくるようになりました。
そこで娘は、法事以来4ヵ月ぶりに道子さんの家を訪ねることにしました。
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