●利下げ実施はほぼ確実も、FRBが市場との対話に苦慮し、幅は25bpと50bpで見方が分かれる。
●ドットチャートは先行きの利下げ回数増加、SEPは失業率小幅上昇、インフレ率小幅低下を予想。
●パウエル発言も含め今回のFOMCはハト派的に、利下げ幅25bpでも市場の混乱は回避されよう。
利下げ実施はほぼ確実も、FRBが市場との対話に苦慮し、幅は25bpと50bpで見方が分かれる
米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月17日、18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催します。今回は、FOMC声明やパウエル議長の記者会見に加え、FOMCメンバーによる最新の経済見通し(SEP、Summary of Economic Projections)が公表され、そのなかでメンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」も更新されます。そこで、以下、それぞれについて主な注目点を整理していきます。
今回、FRBが4年半ぶりの利下げに踏み切ることはほぼ確実な情勢ですが、利下げ幅については市場の見方が分かれています。弊社は25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを予想していますが、直近のフェデラルファンド(FF)金利先物市場では、50bpの利下げ確率が上昇しています。FOMCの直前になっても、市場の利下げ幅の見方が定まらないのは、FRBが市場との対話を上手く進められなかったためと思われます。
ドットチャートは先行きの利下げ回数増加、SEPは失業率小幅上昇、インフレ率小幅低下を予想
FOMC声明では、利下げ決定の背景として、インフレの一段の鈍化と、雇用情勢悪化のリスクが指摘されるとみています。ドットチャートでは、メンバーが適切と考える25bpの利下げ回数について、2024年1回から3回、2025年は4回から5.5回、2026年は4回から2回に修正され、新たに示される2027年は0回、「Longer run」(景気を熱しも冷やしもしない「中立金利」を意味する長期のFF金利水準)は2.75%で不変と予想します(図表1)。
SEPでは、実質GDP成長率がほぼ据え置きで、失業率は2024年と2025年、長期中立水準であるLonger runが小幅に引き上げられるものの、2024年と2025年の予想値がLonger runを上回ることはないとみています(図表2)。また、食品とエネルギーを除く個人消費支出物価指数(コアPCE)は2024年と2025年が小幅に引き下げられるものの、2.0%を下回ることはないと考えています。
パウエル発言も含め今回のFOMCはハト派的に、利下げ幅25bpでも市場の混乱は回避されよう
パウエル議長の記者会見については、総じてハト派的な内容が見込まれます。市場では50bpの利下げ予想も多いことから、仮に25bpの利下げ決定後、パウエル議長が「今後の利下げはデータ次第で会合毎に決定する」という従来の見解を繰り返せば、利下げ対応が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」への懸念が強まる恐れもあります。パウエル議長は今回、市場の利下げ期待に配慮し、先行き50bpの利下げの可能性を示唆することも想定されます。
なお、今回、利下げ幅が25bpでも、ドットチャートやパウエル発言がハト派的なものとなれば、大幅な米長期金利上昇、米ドル高、米株安は避けられるとみています。50bpの利下げの可能性を含む利下げ継続の示唆は、米長期金利の低下と米ドル安につながりやすい一方、米国株の下支えとなることも期待されます。日本株にとって、ドル安・円高は懸念材料ですが、米国株が底堅く推移すれば、この懸念はかなり和らぐと思われます。
(2024年9月17日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米利下げ幅、25bpか50bpかで見解割れ。25bpでも「米ドル高・米株安は回避」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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