●直近の各社報道で、12月利上げの市場の織り込みは後退、弊社も今回は利上げ見送りを予想。
●植田総裁の会見では経済・物価が見通し通りに推移していく確度についての最新の見解に注目。
●次回1月会合までには利上げの判断材料がより多くそろうため、弊社は1月の追加利上げを予想。
直近の各社報道で、12月利上げの市場の織り込みは後退、弊社も今回は利上げ見送りを予想
日銀は12月18日、19日に金融政策決定会合を開催します。市場では、前回の10月会合(10月30日、31日開催)以降、今会合における無担保コール翌日物金利の誘導目標(現行0.25%程度)の引き上げ有無が大きな焦点となり、市場が織り込む利上げ確率は一時、約66%まで上昇しました(図表1)。ただ、直近でこの確率は14%程度まで低下しており、弊社も今会合での利上げは見送られると予想しています。
日銀の政策判断を巡り、市場の見方が大きく変化した背景には、植田和男日銀総裁の発言や金融政策に関する各社の報道があると思われます(図表2)。日本経済新聞社が11月30日、植田総裁のインタビューでの発言を電子版で報じた(インタビューは11月28日に実施)あたりまでは、市場で12月の利上げ観測が高まっていましたが、その後の時事通信社などの報道を受け、利上げ観測は後退していきました。
植田総裁の会見では経済・物価が見通し通りに推移していく確度についての最新の見解に注目
現時点で、今会合での利上げ見送りは、ほぼ織り込み済みとみられ、市場の関心はすでに2025年以降の利上げペースに移行していると推測されます。なお、今会合では経済・物価情勢の展望(展望レポート)の公表がなく、植田総裁は会合後の記者会見で、経済・物価の現状と見通しについて詳しく述べることになるため、市場はこのあたりから、2025年以降の利上げペースに関する手掛かりを探ることになると思われます。
植田総裁は従来、経済・物価が見通し通りに推移していく確度が高まれば金融緩和度合いを調整すると述べており、記者会見ではこの確度についての最新の見解が注目されます。また、前述のインタビューで植田総裁が注視していることが確認された、「賃金動向」、「賃金のサービス価格への反映」、「2025年の春季労使交渉(春闘)のモメンタム(勢い)」、「米国経済の先行き」に関し、言及があれば、利上げペースのヒントになると考えます。
次回1月会合までには利上げの判断材料がより多くそろうため、弊社は1月の追加利上げを予想
次回の金融政策決定会合は2025年1月23日、24日に開催されますが、それまでに、日本では春闘に向けた経営側からの発言や、11月と12月分の消費者物価指数(CPI、順に2024年12月20日、2025年1月24日に発表)などを確認できます。また、米国でも12月分の雇用統計とCPI(順に2025年1月10日、15日に発表)や、トランプ氏の大統領就任式(2025年1月20日)直後の政策実施状況などを確認できます。
さらに、次回1月会合では展望レポートも公表され、利上げを判断できる材料は今会合よりも多くそろうことになるため、弊社は1月の追加利上げを予想しています。なお、今会合では、1998年以降の25年間に実施された非伝統的な金融緩和策を総括する「多角的レビュー」が公表される予定です。政策の効果や副作用について、定量的な分析が示される見通しで、こちらも注目したい材料です。
(2024年12月16日)
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日銀の追加利上げは「1月」を予想 12月金融政策決定会合の注目点を整理する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト