●市場では、日経平均の2番底の懸念もみられることから、改めて過去の大幅下落局面を振り返る。
●過去、市場に大きなショックが発生し、日米リセッション入りなら日経平均は長期大幅下落の傾向。
●日米には潤沢な流動性、適切な金融財政政策で日経平均の2番底、長期大幅下落は回避へ。
市場では、日経平均の2番底の懸念もみられることから、改めて過去の大幅下落局面を振り返る
9月9日の日経平均株価は、6日の8月米雇用統計を受けた米株安やドル安・円高の流れを背景に、一時3万5,200円台をつけ、下げ幅が前週末比1,100円を超える場面もみられました。しかしながら、その後は米ナスダック100指数先物が上昇し、ドル円がドル高・円安方向に転じると、日経平均は下げ幅を縮小し、結局、前週末比175円72銭(0.5%)安の36,215円75銭で取引を終えました。
米景気の先行きが依然見通しにくいなか、米ハイテク株やドル円相場も不安定な動きが続いており、市場では日経平均が8月5日の取引時間中につけた直近安値(31,156円12銭)を割り込み、2番底をつけに行くのではないかとの懸念もみられます。そこで今回のレポートでは、過去に日経平均が大きく下げた局面を改めて振り返り、現時点と比較した上で、今後の注目点を整理します。
過去、市場に大きなショックが発生し、日米リセッション入りなら日経平均は長期大幅下落の傾向
図表は、2000年1月から直近まで、日経平均が約20%以上の下げとなった主な下落局面を示したものです。以下、各局面について日経平均の下落率と当時の主な出来事を整理します。下落局面①では、米ドットコムバブルの崩壊や米同時多発テロの発生などにより、下落率は63.5%に達しました。次に、下落局面②では、米サブプライムローン問題の拡大や、米リーマンブラザースの破綻、世界的な金融危機の発生などにより、下落率は引き続き60%を超え、61.4%となりました。
続く下落局面③では、チャイナ・ショックや原油安などにより28.3%下げ、下落局面④では、米中貿易摩擦問題の深刻化やコロナ・ショックなどにより31.8%下げました。そして、下落局面⑤では、米インフレ懸念やロシアのウクライナ侵攻などにより、下落率は19.4%となりました。なお、下落局面①、②、④において、日米とも景気後退(リセッション)入りとなりました。
日米には潤沢な流動性、適切な金融財政政策で日経平均の2番底、長期大幅下落は回避へ
過去の5回の下落局面を振り返ると、「金融市場に大きなショックが発生」し、「日米ともリセッション入り」の流れになる場合、相対的に日経平均は「長期にわたり大幅に下落する」傾向があるように思われます。この点を踏まえると、日経平均が2番底をつけ、長期にわたって大幅に下落するような展開となるきっかけとしては、「金融市場に大きなショックが発生」し、「日米ともリセッション入り」することが考えられます。
ただ、中央銀行当座預金など、日米の金融システムには依然潤沢な流動性が滞留しており、仮に予期せぬショックが発生しても、過去に比べ市場や経済への影響が軽減されやすい状態にあると思われます。また、日米ともこの先、金融政策および財政政策が適切に運営されれば、リセッション入りのリスクは低下するため、日経平均が2番底をつけ、長期にわたって大幅に下落する恐れは小さいとみています。
(2024年9月10日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価の「2番底」を心配する前に確認しておきたいこと【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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