●今会合では大方の予想通り追加利上げは見送りへ、焦点は記者会見における植田総裁の発言。
●植田総裁発言を読む上で主要メンバーの政策運営や金融情勢などに関する直近の発言が重要。
●注目は見通し実現の確度と金融情勢、年末年始あたりの利上げ可能性を残すメッセージを予想。
今会合では大方の予想通り追加利上げは見送りへ、焦点は記者会見における植田総裁の発言
日銀は9月19日、20日に金融政策決定会合を開催します。市場では今回、無担保コール翌日物金利の誘導目標(現行0.25%程度)の引き上げ、すなわち追加利上げはないとの見方が優勢となっており、弊社も政策変更はないと予想しています。そのため、植田和男総裁の記者会見における発言が、今会合の焦点になると思われ、市場は植田総裁の発言から追加利上げの時期に関する手掛かりを探ることになるとみています。
そこで、以下、植田総裁からどのようなメッセージが発信されるかについて考えます。その際、参考になるのは最近の日銀政策委員会メンバーの発言で、8月以降、内田副総裁、植田総裁、氷見野副総裁、高田審議委員、中川審議委員、田村審議委員の6名が、懇談会とその後の記者会見(植田総裁は衆議院財務金融委員会の閉会中審査)で発言しており、主要項目ごとのそれぞれの見解は図表の通りとなります。
植田総裁発言を読む上で主要メンバーの政策運営や金融情勢などに関する直近の発言が重要
主要項目に関する基本的な考え方は、6名のメンバーの間で相違はないように思われます。まず、「物価の見通し」については、7月31日公表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」に基づき、見通し期間後半には物価安定の目標とおおむね整合的な水準で推移するとの見解です。また、「実質金利」に関し、7月の政策金利変更後も大幅なマイナス水準にあり、緩和的な金融環境が経済活動をサポートするとの見方が示されています。
次に「金融政策の運営」については、経済・物価の見通しが実現する確度が高まれば、金融緩和の度合いを調整していくとの考えで一致しています。ただ、「金融情勢」は、その動向や経済・物価に与える影響について、極めて高い緊張感をもって注視するとしており、先行きの金融政策の判断にあたっては、経済・物価の見通しに加え、金融情勢も重要な要素であることが示されました。
注目は見通し実現の確度と金融情勢、年末年始あたりの利上げ可能性を残すメッセージを予想
以上を踏まえると、植田総裁は金融政策の運営について、引き続き、経済・物価の見通しが実現する確度が高まれば、金融緩和の度合いを調整していくとの見解を示す公算が大きいと思われます。注目すべきは、現時点での「見通しが実現する確度」と「金融情勢」の判断で、今回は、経済・物価は見通しに沿って推移しているものの、金融情勢は引き続き注視する必要がある旨の考えが示されるのではないかとみています。
この場合、利上げ路線を堅持しつつも、まずは金融情勢の落ち着きを待つという日銀の姿勢が確認され、年末年始あたりに追加利上げを実施する可能性を残すメッセージになることから、市場も比較的落ち着いた反応が予想されます。仮に、金融情勢はかなり落ち着いてきた旨の見解が示されれば、10月の追加利上げも視野に入ってきますが、最近の日本株の不安定な動きや円高傾向を踏まえると、その可能性は低いと思われます。
(2024年9月18日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『24年9月・日銀会合、植田総裁は「年末年始あたりの利上げ可能性を残す」と予想【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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