(画像はイメージです/PIXTA)

不安定ながらも円高傾向が続く値動きのなか、「円安トレンド」の転換が予感される現在、「米ドル円」に対する世の中の関心はかつてないほどに高まっています。そこで、来週の米ドル円相場の動向に影響を与えそうな、先週の米国経済の動きについて、東京海上アセットマネジメントが解説します。

個人消費に勢いも、貯蓄率は低下…消費の持続可能性に疑問符

⽶商務省が公表した2024年7⽉の個⼈⽀出(価格変動の影響を除いた実質ベース)は前⽉⽐+0.4%(6⽉︓同+0.3%)と、市場予想(同+0.3%)を上回りました(図表1)。

 

[図表1]実質個⼈⽀出と実質可処分所得
[図表1]実質個⼈⽀出と実質可処分所得

 

実質個⼈⽀出を四半期ベースでみると、2024年1~3⽉期の前期⽐+0.4%から4~6⽉期に同+0.7%へ加速し、7⽉は4~6⽉期(平均)を+0.8%上回る⽔準にあります。2024年⼊り後の個⼈消費の低調さは⼀時的なものにとどまり、⾜もとでは再び勢いを取り戻しています。

 

7⽉の実質可処分所得は、前⽉⽐+0.1%(6⽉︓同+0.1%)と⼩幅なプラスが続いています。四半期ベースでは、2024年1~3⽉期が前期⽐+0.3%、4~6⽉期が同+0.2%、7⽉の4~6⽉期対⽐が+0.3%と安定した伸びを⽰しているものの、実質個⼈⽀出の伸びを下回る状況が続いています。

 

可処分所得を上回るペースで消費を⾏った結果、7⽉の貯蓄率(貯蓄額÷可処分所得)は2.9%へ低下し、コロナ禍前の半分に満たない⽔準に低下しています(図表2)。

 

[図表2]貯蓄の推移
[図表2]貯蓄の推移

 

コロナ禍で積み上がった過剰貯蓄は、すでに取り崩されたとみられるものの、家計は貯蓄率の低下を許容してでも、⾼⽔準の消費を続けている状況にあります。

 

コロナ禍を経て、家計の貯蓄率に対する⽔準感が変わった可能性は否定できないものの、各種経済指標において、家計の消費者マインドが悪化している点や労働市場が減速している点などを踏まえると、消費の持続可能性に疑問を投げかける内容となっています。

住宅のインフレ率低下ペースも加速の可能性

消費を取り巻く環境を総合的に判断すれば、⽬先、個⼈消費は⼀定の減速局⾯を迎える可能性があります。2024年7⽉の⾷料品及びエネルギーを除いたコアPCE(個⼈消費⽀出) デフレーターは前年⽐+2.6% と、6⽉( 同+2.6%)から横ばいとなりました(図表3)。

 

[図表3]コアPCEデフレーターの推移
[図表3]コアPCEデフレーターの推移

 

内訳では、コア財(6⽉︓前年⽐▲0.9%→7⽉︓同▲0.5%)の下落幅が縮⼩したものの、コアサービス(6⽉︓前年⽐+3.8%→7⽉︓同+3.7%)は僅かながら伸びが鈍化しました。

 

コアサービスのうち、ウェイトの⾼い住宅サービス(住居家賃や帰属家賃)のインフレ率低下は依然として緩やかなものにとどまっているものの、新規契約物件の家賃を⽰すZillow家賃指数(前年⽐)は、コロナ禍前を下回る⽔準に低下していることから、住宅サービスのインフレ率低下ペースは、加速し始める可能性があります(図表4)。

 

[図表4]住宅サービスとZillow家賃指数
[図表4]住宅サービスとZillow家賃指数

 

物価の瞬間⾵速を⽰す前⽉⽐では、7⽉のコアPCEデフレーターは+0.16%(6⽉︓+0.16%)と、おおむね市場予想通りの結果となりました(図表5)。

 

[図表5]コアPCEデフレーターの基調的な動き
[図表5]コアPCEデフレーターの基調的な動き

 

FRBがインフレのモメンタムを測るうえで重視している3ヵ月前⽐年率値は+1.72%(6⽉︓+2.10%)と4ヵ月連続で伸びが減速したほか、6ヵ月前⽐年率値では+2.57%(6⽉︓+3.28%)と減速に転じており、物価⽬標である2%が視野に⼊りつつあります。

 

7⽉のコアPCEデフレーターは、引き続きインフレ圧⼒が和らいでいるとの⾒⽅を裏付けるものとなり、9⽉FOMCでの利下げ開始を正当化する結果といえます。もっとも、インフレ抑制に注⼒してきたFRBは、労働市場悪化のリスクも注視し始めていることから、インフレ動向がFRBの利下げ判断に及ぼす影響は⼤きくないと考えられます。

 

このため、市場の焦点である9⽉FOMCでの利下げ幅や、その後の利下げ時期については、8⽉の雇⽤統計(9/6公表)の結果に⼤きく左右されることになります。

 

次ページ米国労働市場…需要の減速が鮮明

※本連載は、東京海上アセットマネジメントのレポート『〜TMAMマーケットウィークリー(9/2〜6)~』より一部を抜粋し、再編集したものです。
【ご留意事項】
・当資料は、情報提供を目的として東京海上アセットマネジメントが作成した資料であり、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。お申込みに当たっては必ず投資信託説明書(交付目論見書)をご覧の上、ご自身でご判断ください。投資信託説明書(交付目論見書)は販売会社までご請求ください。
・当資料の内容は作成日時点のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
・当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載された図表等の内容は、将来の運用成果や市場環境の変動等を示唆・保証するものではありません。
・投資信託は、値動きのある証券等(外貨建資産に投資する場合には、この他に為替変動リスクもあります)に投資しますので、基準価額は変動します。したがって、元本が保証されているものではありません。
・投資信託は金融機関の預金とは異なり元本が保証されているものではありません。委託会社の運用指図によって信託財産に生じた利益および損失は、全て投資家に帰属します。
・投資信託は、金融商品取引法第37条の6の規定(いわゆるクーリング・オフ)の適用はありません。
・投資信託は、預金および保険契約ではありません。また、預金保険や保険契約者保護機構の対象ではありません。
・登録金融機関から購入した投資信託は投資者保護基金の補償対象ではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録