(※写真はイメージです/PIXTA)

タックスヘイブンの利用実態を暴いたパナマ文書などを機に、世界中の税務当局は超富裕層の過度な節税や租税回避に対して、これまで以上に厳しく目を光らせています。超富裕層は複数の国々に資金を移動させ、また複雑な枠組みを用いて資産管理を行っています。今回は国際的な租税回避の現状について取り上げます。本連載では、富裕層の相続問題の諸課題について解説します。

脱税と租税回避は何が違う?

新聞記事などを目にすると、「脱税」という用語が頻繁に使用されていますが、これは税法に違反して「税金をごまかす」ことを意味します。類似した用語で「申告漏れ」という用語もあります。これは脱税ではないが、所得金額などが誤っていたことを指す用語です。

 

「脱税」ではなく、合法の範囲内で、通常あり得ないような取引形態などを使用することで、税負担を著しく軽減する行為のことを「租税回避」といいます。国内でも「租税回避」はできないことはありませんが、国際的には多くの「租税回避」の選択肢があります。

 

1つは、税負担の軽い国等の存在です。これらの「国等」は「タックスヘイブン」といわれています。もっとも有名なタックスヘイブンは、カリブ海にあるケイマン諸島です。ここは英国の海外領土ですが、法人税・所得税がありません。このような法人税・所得税がない「国等」は世界に10ぐらいあります。

 

なお、先進国はタックスヘイブンを利用した「租税回避」への対抗策として、「タックスヘイブン税制」が整備されています。企業あるいは富裕層は、これらをうまく利用して税負担を軽くしようと試みます。

 

このような試みは、それを専門としては法律事務所がタックスプランニングをしています。2016年4月に報道された「パナマ文書」は、これらの事務所から情報が漏えいした事件です。隠していた税務情報が南ドイツ新聞にもたらされたのがこの事件の発端です。この税務情報には、1,100万件を超える文書やEメールが含まれていました。

 

これに関与したのは、タックスヘイブンで法人設立を手掛けるパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部資料で、その期間は、1970年代から最近までありました。「パナマ文書」以降も同様な事件が続き、海外の政治家等の名前が報道されたことで注目されました。

 

富裕層の租税回避」の別の手法は、相続税のない国を利用するものです。アジア・オセアニアではみると、香港やシンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどは相続税がありません。

 

これらの国に移住して相続税を逃れようと考えた日本の富裕層がいましたが、相続税の改正によりこの画策は成功しなかったという報道もありました。

 

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