(※写真はイメージです/PIXTA)

タックスヘイブンの利用実態を暴いたパナマ文書などを機に、世界中の税務当局は超富裕層の過度な節税や租税回避に対して、これまで以上に厳しく目を光らせています。超富裕層は複数の国々に資金を移動させ、また複雑な枠組みを用いて資産管理を行っています。今回は国際的な租税回避の現状について取り上げます。本連載では、富裕層の相続問題の諸課題について解説します。

巨大IT企業への課税強化

GAFAあるいはFANGという用語が新聞などで頻繁に使用されています。これは、グーグル、アップル、フェースブック、アマゾン、ネットフィリックスなどの頭文字を組み合わせたもので、巨大IT企業のことです。

 

現在、国際機関のOECDは、これらの企業が「租税回避」をしていることから、その対策としてデジタル課税の整備を行っています。

 

例えば、アマゾンは一時期、日本で売上に対応する法人税を逃れていました。これは国際課税における事業上の拠点(支店等)を意味する恒久的施設が日本に存在しないスキームを作り、税負担を軽くしていました。

 

当然、税務当局は調査を行いましたが、十分な成果が出なかったようです。しかし、その後、同社は方針を変更して日本において一定の法人税を納付するようになりました。

 

英国では、コーヒーチェーンのスターバックスが長い間、税負担の軽減を行っていました。スターバックスはEUの一部の国と有利な税制で合意をすることで、「租税回避」が行われていましたので、EUはこれをEU法に反する「国家補助」としてその摘発を行いました。

 

スターバックスの「租税回避」の方法は、コーヒーの原材料の輸入にスイスの関係会社を介在させて、ここに一部の利益を落とすことで価格を引き上げ、さらにオランダの関係会社に使用料を支払うことで利益を圧縮していました。

 

写真/PIXTA

このような企業等の行動に対しては前述したデジタル課税による市場国における課税強化、富裕層に対しては各国間で金融口座情報の交換を行ない、各国の税務当局が連携を行うなど対策を講じています。

 

本連載は富裕層を対象にしていますが、タックスプランニングを職業とする弁護士、会計士などと、各国の税務当局およびOECDの知恵比べというのが現状です。

 

課税の公平という観点から、資金を有する者が専門家を使って税負担の軽減を図ることは、その行為が取引の濫用等に該当する場合には、課税処分が必要です。

 

今後は、国際課税分野は、「租税回避」を1つのキーワードとして、その動向が注目されています。

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

 

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