前回は、保有物件で「無店舗型の風俗業」の営業を許可するメリットを取り上げました。今回は、「200メートル規制」をクリアした物件の魅力について見ていきます。

暴力団、風俗営業を締め出す「200メートル規制」

東京は土地や建物の価格が上昇しており、不動産投資家はなかなか利回りの良い物件を買うことができなくなっています。しかし、ビルのオーナーや不動産屋も気づいていない、とんでもなく利回りが高い物件があるのです。それは「200メートル規制」が生んだ物件です。

 

200メートル規制は、暴力団排除条例と1984(昭和59)年の法改正後の店舗型性風俗特殊営業の条例の中にあります。まず暴力団排除条例とは、社会、経済のあらゆる場所から暴力団を締め出し、資金源を断つことを目的とするもので、利益の供与にあたるとして不動産屋も厳しく取引が禁止されています。コンプライアンスの問題です。つまり暴力団には貸さない、売らないということです。

 

暴力団が事務所を借りるには、商業地域等で保護対象施設(幼稚園、学校、公共施設など)から200メートル以上離れていなければならないうえに、当然大家さんの許可が必要です。大家さんも暴力団に貸したい人は誰もいませんので、現在では組事務所は作れないといえます。

 

店舗型性風俗特殊営業も、同じく商業地域等で、保護対象施設から200メートル以上離れていなければいけません。ただし、特定地域というのがあって、新宿歌舞伎町や港区新橋、銀座などは保護対象施設は考慮されないことになっています。

「風俗スタジオ」を営業できる物件は引く手あまた

それ以外の商業地域等で、200メートル規制をクリアしているビルがときどきあります。これが至高の物件なのです。キャバクラやヘルス等は繁華街にしか向かないのですが、ヌード撮影会や風俗スタジオなどは派手な看板がなくてもインターネットで人が集まりますので、多少駅から遠くても問題ないのです。派手な看板もドンチャンさわぎもない、事務所のような店舗ですので、大家さんからも承諾書を出していただけます。

 

東京都内でも、風俗スタジオは数えるくらいしかありません。そういうスタジオ等が少ないので、お客さんは地方から遠路はるばるやってきます。それに会費や入場料、撮影料なども、いくらでも払います。予約でいっぱいで、次回に回されるお客さんもいるそうです。当然、物件には希少価値が付き、競争になり、相場の2~3倍でも引く手あまたです。もしその場所がビルだったとしたら、ビル全体が相場の家賃の3倍になり、利回りは都内において20%強ぐらいにはね上がるということです。

 

結果的に、このビルは風俗ビルになってしまいますが、派手な看板もなくとくに問題もありませんし、銀行のローン返済などすぐ終わってしまうでしょう。でも、このことはくれぐれも他の人に言わないで秘密にしてくださいね(最初から風俗ビルの場合は銀行融資が厳しいです)。

本連載は、2016年10月21日刊行の書籍『誰も知らない不動産屋のウラ話』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

誰も知らない不動産屋のウラ話

誰も知らない不動産屋のウラ話

川嶋 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

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