公文書改ざんに関わり、命を落とした職員
2018年3月7日、土地の売却を管轄する近畿財務局職員の赤木俊夫氏が自殺した。決裁文書の改ざんを命じられた赤木氏は、良心の呵責からうつ病になり休職していた。
赤木氏の妻の赤木雅子氏は、2020年3月18日、国と佐川宣寿元同省理財局長を提訴した。
形式上は損害賠償請求や情報開示請求だが、雅子氏は「夫が死を選ぶ原因となった改ざんは誰がなんのためにやったのか。改ざんをする原因となった土地の売り払いはどうやって行なわれたか、真実を知りたい」と語り、本当の目的が真実の追究であると明らかにした。
雅子氏が起こした裁判は3ルートが存在した。1つは、国に対する約1億円の補償を求めた損害賠償請求、2つ目は、佐川元理財局長に対して550万円(その後1650万円に増額)の補償を求めた損害賠償請求、3つ目が、財務省が検察に任意提出した文書を開示する情報開示請求だ。
このうち国への損害賠償請求の裁判は、驚愕の結末を迎えた。
2021年12月15日、大阪地裁で行なわれた裁判で、国側はその場で賠償責任を認め、1億円の請求を受け入れる書面を提出して、裁判が終結したのだ。
全面的に賠償責任を認めることを法律用語では「認諾」というそうだが、私はその言葉を初めて聞いた。国が全面的に責任を認めたのは反省したからではない。裁判が長引くことで真実が明らかになることを防ぎたかったのだろう。
もちろん、この賠償金は国民の税金から支払われるのだ。
裁かれない重大犯罪…なぜ真実が明かされないのか
残りの2ルートの裁判は継続している。
1つは改ざんの指示を出したとされる佐川宣寿元理財局長を訴えたものだ。その裁判の控訴審で、2023年9月13日に口頭弁論が開かれた。焦点は、雅子さんが求めた佐川氏への尋問が認められるかどうかだった。
雅子さんは「最後に裁判官の皆さまにお願いがあります。私は夫がどうして死ななければならなかったのかを知りたいです。
そのためにも、法廷で改ざんに関わった人たちから話を聞きたいです。仕事の上で犯罪行為をしてもなんの説明もせず責任を逃れられることがここで証明されるのはおかしいと思います」と要求したのだが、裁判長は最終的に「尋問を実施する必要はないと考えます」とあっさり退けてしまった。
この控訴審の判決が2023年12月19日に行なわれ、大方の予想どおり大阪高裁は雅子さんの控訴を棄却した。雅子さんは即座に最高裁への上告の決意を表明した。
そして2023年9月14日、雅子さんが財務省に情報開示を求めた裁判の地裁判決があった。財務省が捜査の際に検察に任意提出した文書などを開示するよう雅子さんは財務省に求めたが、文書が存在するかどうかも含めて開示できないと財務省が回答したため、裁判に持ち込んだ。
しかし、判決は、文書の存否を含めて開示する必要がないとし、雅子さんの全面敗訴となった。裁判長は判決理由として、「捜査手法や対象が推知され証拠隠滅が容易になるなど、将来の刑事事件の捜査に支障が及ぶ恐れがある」と述べた。
財務省が検察に提出した文書があるかどうかを開示すると、なぜ将来の刑事事件の捜査に悪影響が出るのか、私にはまったく理解できない。
この事件では、財務省本省の命令で公務員としてもっともやってはいけない「決裁文書の改ざん」という重大犯罪が行なわれ、しかも一人の財務局職員が苦悩のなか、命を落としているのだ。真実を明らかにするほうが同様の事件発生を抑制できるのではないか。
森永 卓郎
経済アナリスト
獨協大学経済学部 教授
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