顧客の「満足感」や「信頼」が次の仕事につながる
さて、営業マンや組織の育成・マネジメントの話はこれくらいにして、会社としての目指すべきところをお伝えしていきます。
『まごの手宅配便』のスタッフがお客様のお宅で作業をしていると、お客様のほうから「この間、太陽光発電にしませんかって、どこかのセールスマンが来たんだけど、うちは本当にそうしたほうがいいのかしら」などの相談を持ち掛けられるようになります。作業員は営業にはノータッチですから、「それなら、うちの営業マンに聞いてみますか?」と営業マンとの橋渡しをします。
このようにして『まごの手宅配便』から本業のリフォームへと受注が繋がれていくのですが、現在、売上の8割はこのルートで持ち込まれたものです。
この仕組みが成り立っているのは、『まごの手宅配便』のサービスが安いからではありません。「本当に困っていることを助けてもらえる」というお客様の満足感や信頼です。
お客様の心理を考えて「受け入れられるか否か」
たとえば、先日もお客様から遺品整理を頼まれました。さすがに一回90分では済まないので、何回分かのチケットをまとめて使うことになりましたが、「こんなことまでやってくれると思わなかったわ。本当にありがとう!」と大変感激していただきました。
ビジネスでは価格も大事ですが、お客様の心をいかに満たすかというのが最も重要です。そういう意味で、「ビジネスには心理学がなくてはならない」というのが私の常々感じていたことです。
株式会社セブン&アイ・ホールディングスの前会長・鈴木敏文さんの著書に、今の経済は経済学で動いているのではなく心理学で動いている、という内容のことが書かれていました。鈴木会長と私とでは天と地ほどの差がありますが、自分も同じことを感じていたので、すごく感銘を受けたことを思い出します。
利益が出るか否かの発想では既存のビジネスモデルの外に出ることはできませんから、大手企業や歴史のある企業には勝てません。
『まごの手宅配便』が生まれたのも、利益が出るか出ないかの発想ではありませんでした。お客様の心理を考えて、まずは受け入れられるか否かの判断です。受け入れられると判断すればスタート、次にどうやって利益を出していくのかと考えていく。課題の分離をして考えていくことが重要なのだと思います。
だからこそ、私自分自身も何かを考えるときには常にお客様がどう感じるかを念頭に考えます。サービスの修正や変更を幾度となく行ってきましたが、お客様の立場から考えた修正は当然受け入れられるものの、自分たちの立場から考えて修正したことはやはり問題が起こります。
世の中を見渡しても、消費者から見て「ちょっと」と引っかかるサービスは、「それはおかしいぞ」と切り込み修正をかけてくる企業がいくらでもあります。そのままでも通じるサービスに一旦どこかの企業がメスを入れれば、胡坐をかいている企業はあっという間に市場から消えていきます。
常に問題意識をもって本質に立ち返り、他社の動向に左右されるのではなく、自分たちが問題だと思うことはサッサとやってしまうほうが、遥かに気持ちがいいでしょう。
一番ダメなのは、わかっていて何もしないことです。私自身、そういうときはなぜこのビジネスを始めたのか、初心を思い出すようにしています。