森永卓郎「私は人体実験の材料ではない」…ステージ4末期がんで〈余命宣告〉を受けた後、各所から届いた「手紙」の驚きの中身

森永卓郎「私は人体実験の材料ではない」…ステージ4末期がんで〈余命宣告〉を受けた後、各所から届いた「手紙」の驚きの中身
(※写真はイメージです/PIXTA)

昨年末に膵臓がんであることを公表した、経済アナリストの森永卓郎氏。がんが発覚した時にはすでにステージ4で、余命4ヵ月の宣告を受けました。がんを公表後、森永氏のもとには、がん治療に関するさまざまなアドバイスが届いているといいます。今回、森永氏の著書『がん闘病日記』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より、現在も精力的に執筆活動を継続する森永氏が、方々から届く「がんの治療法」にまつわる情報に対して抱いている「社会科学者」としての見解について、見ていきましょう。

がん治療に対する社会科学者としての見解

なぜ、がん治療に関して、こうした百家争鳴のような状況が起きているのかというと、がんの治療に関しては、まだまだわかっていないことが多いからだと思う。

 

実際、がんには特効薬がない。たとえば、A型インフルエンザの患者に治療薬のタミフルを投与すると、発熱期間を1日短縮するということが統計的に明らかになっている。また臨床面でいうと、大部分の患者が、投与後すぐに症状が改善すると医師は言う。

 

ところが、がんの場合はそうはいかない。

 

効果がすぐに出ることはないし、同じ治療をしても、患者によって効果を発揮する人としない人が明確に分かれるのだ。

 

実際、私のところに来た「この治療法が効く」というアドバイスの大部分が「私はこの方法でがんからの生還を果たした」とか、「私の知り合いがこの方法で治癒した」というものだった。サンプル数は1が大部分で、最大でも3だ。

 

私はこれでも社会科学者のはしくれで、これまで多くの調査の分析をしてきた。大雑把に言うと、少なくとも100くらいのサンプルがないと、本当の効果はわからないことが多いのだ。

 

たとえば、新薬の治験を行なう際には、被験者を2つのグループに分けて、1つのグループにはなんの効果もない偽薬を与える。そして、もう1つのグループには新薬を与える。そして、両方のグループの症状改善に有意な差があるのかを検証する。

 

新薬に効果があるという仮説を立て、その仮説が間違いである確率を統計学ではP値というのだが、一般的にはP値が5%を切るようでないと効果は立証できないとされる。そして、このP値は、劇的な効果があるものほど、少ないサンプル数でも下がる特徴がある。がんの場合は、劇的な効果を持つ治療法がないのだから、効果の立証のためには、より多くのサンプルが必要になるのだ。

 

あくまでもイメージだが、ある治療法が効果を発揮する確率が2分の1だとしよう。悪くなる可能性も2分の1だから、効果はまったくないということになる。それでも世の中の人の半分は、この治療法で治ったと考える。仮に3人の人が、全員快復したとする。そうしたことが偶然起きる可能性は2分の1の3乗、すなわち8分の1だから、12.5%の確率で起きることになる。全体の1割以上のケースで起きるのだから、それを目の前にした国民が「効果がある」との声を上げれば、相当な数になるのだ。

 

もちろん、そうしたことをわかっていて、きちんとした医学論文を送ってきてくれた医療関係者もいた。

 

ただ、そうした論文を読んでみると、新しい治療法がもたらす5年後生存率の改善は、数%にとどまっている。劇的な効果はない。がん治療というのは、そういうものなのだ。

 

これは統計的に立証されたものではないのだが、ある医師に話を聞いたところ、がん治療薬として認められて、保険診療の対象にもなっているオプジーボでも、効果を発揮してがんが消滅する人は、全体の2割程度にとどまるという。8割の人を救うことはできないのだ。

 

 

森永卓郎

経済アナリスト

獨協大学経済学部 教授

 

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※本連載は、森永卓郎氏による著書『がん闘病日記』(フォレスト出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

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