森永卓郎「私は人体実験の材料ではない」…ステージ4末期がんで〈余命宣告〉を受けた後、各所から届いた「手紙」の驚きの中身

森永卓郎「私は人体実験の材料ではない」…ステージ4末期がんで〈余命宣告〉を受けた後、各所から届いた「手紙」の驚きの中身
(※写真はイメージです/PIXTA)

昨年末に膵臓がんであることを公表した、経済アナリストの森永卓郎氏。がんが発覚した時にはすでにステージ4で、余命4ヵ月の宣告を受けました。がんを公表後、森永氏のもとには、がん治療に関するさまざまなアドバイスが届いているといいます。今回、森永氏の著書『がん闘病日記』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より、現在も精力的に執筆活動を継続する森永氏が、方々から届く「がんの治療法」にまつわる情報に対して抱いている「社会科学者」としての見解について、見ていきましょう。

「多くのがん患者を救う」名医がいるクリニック

「この病院やクリニックにがん治療の名医がいて、多くの患者を救っている」という情報も数多く寄せられた。

 

わが家はトカイナカ暮らしで、提案された医療機関は、家から少なくとも数時間以上かかる場所ばかりだったので、受診しようとは思わなかったが、そもそもがん治療にブラックジャックのような名医が存在するのだろうか。

 

たとえば、手先が器用で、とてつもないスピードで正確な手術ができる脳神経外科医は存在している。がんの場合も手術で患部を摘出することはあるが、多くは抗がん剤による化学療法や放射線治療だ。そのときに、医師の技量によって、結果にとてつもない差が生まれるとは考えにくいのだ。

アドバイスしてくれる人は3タイプに分類できる

正直言うと、私のところに寄せられた大量のアドバイスのなかで、これはやってみようと判断した対策はひとつもなかった。

 

ただ、多くの人が極めて熱心にアドバイスをしてきてくれる。それはなぜなのか。アドバイスをしてくれる人は、おおまかに3種類に分かれていると思われる。

 

第一は、純粋に私の快復を祈っている人たちだ。

 

自分にできることは何かを考えて、その知識の範囲内で提言をしてくる。

 

「この本を読んだらいいですよ」「このネット記事を見てください」というのが、典型的なものだ。

 

第二は、私を広告塔として利用しようと考えている人だ。

 

新興宗教のお誘いが典型だ。もし私が入信したあと、がんからの生還を果たしたとする。それは新興宗教にとって格好の宣伝材料になる。

 

一方、私が命を落としたとしても、入信したことを無視しておけばよい。つまり、ノーリスクの賭けになるのだ。

 

また、がん治療に関する「独自理論」を持つ人にとっても、私がその理論に従った治療を行なって快復したら、それは自身の理論が正しかったという証明になるので、大きな満足が得られる。

 

実際、私のところに届いた手紙のなかにも、「森永さんのがんをこの方法で治癒させれば、私の理論が正しかったことを世間に納得させることができるので、ぜひチャレンジしてほしい」と書いたものがあった。

 

とても正直な人だと思ったが、私は人体実験の材料ではないのだ。

 

第三は、がん治療ビジネスだ。

 

がんの自由診療には、高額の費用がかかることが多い。たとえば、健康食品でも、1つ数千円もするものは珍しくないし、奇跡の水でも、ペットボトル1本が1万円を超えるものもある。さらにマイクロウェーブでがん細胞を殺す温熱療法も、治療ワンセットで200万円を超えるサービスを複数のクリニックが提供している。明らかに高収益のビジネスだ。

 

そうしたところを私が利用して成功すれば、格好の宣伝材料にもなるのだ。

 

さらに月額負担が数万円程度という金額でも、マルチ商法を採用している健康食品メーカーがある。がんに効くという健康食品を買うためには、その会社に会員登録をしないといけない。会員登録をすると、自ら健康食品を定期購入する必要が出てくるだけでなく、健康食品を世のなかに普及させる義務を負う。そして、新規顧客を獲得すれば、メーカーから一定の報酬が支払われるという仕組みだ。

 

私はマルチ商法の片棒をかつぐ気持ちをまったく持っていない。

 

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※本連載は、森永卓郎氏による著書『がん闘病日記』(フォレスト出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

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