(※写真はイメージです/PIXTA)

フランクリン・テンプルトン・インスティテュート/チーフマーケットストラテジストのスティーブン・ドーバーは、最近の米国経済指標を受けて市場が動揺しているものの、米国経済が景気後退に向かっていると断定するのは早計だと指摘しています。ドーバーは、最近の市場の動きと、今後予想されるFRB(連邦準備制度理事会)の利下げがもたらす希望の光について、自身の見解を述べています。

※本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が2024年8月5日に配信したレポートを転載したものです。

オルタナティブ投資

当社は以前からプライベート・エクイティに対して慎重な姿勢を取っており、その中ではセカンダリー市場を選好してきました。特に今のようにファンダメンタルズに関するリスクが高まっている時期は状況が見えにくいため、改めて慎重な姿勢を強調します。


一方、プライベート・クレジットは、特に銀行がさらに融資に慎重になった場合、より魅力的な投資機会になると予想されます。価格設定も投資家にとって有利になるでしょう。長期的には、投資家は魅力的な割引価格での投資機会を得られるはずです。これは特に、現在の市場環境下で新規に資金を投じる投資家にとって当てはまります。


何よりも強調したいのは、運用マネージャーの選択が極めて重要だということです。市場の混乱により、優秀な運用マネージャーとそうでないマネージャーの運用成績の差(いわゆる「アルファの分散」)が大きく広がる可能性が高いのです。

ファンダメンタルズ

最後に、ファンダメンタルズに関する当社の見解をいくつか付け加えます。


米国の景気後退リスクが明らかに高まっており、これは市場価格の急激な変動に表れています。失業保険申請件数の増加、7月の雇用統計の悪化、製造業の縮小傾向など、一連の経済指標の悪化が市場の見方を一変させました。


しかし、他の経済指標はそれほど悪くありません。例えば、最新の非製造業部門の景況感指数(ISM非製造業指数)、第2四半期の米国GDP速報値、小売業界からの情報などは、比較的良好な状態を示しています。


当社の見解では、米国経済が景気後退に向かっていると断定するのは時期尚早です。とはいえ、景気がより顕著に減速しただけでも、現在の過大評価された株式市場では想定外の企業業績の悪化につながる可能性があります。


FRBは9月以降、確実に利下げに踏み切るでしょう。9月のFOMC(連邦公開市場委員会)では0.50%の利下げが市場で予想されており、定例会合の間の「緊急」利下げの可能性も否定できません。投資家は、FRBの政策の手掛かりを得るため、8月にワイオミング州ジャクソンホールで開催されるFRBの会合に注目するでしょう。


歴史的に見ると、FRBが利下げを開始した後の1年間、株式市場は上昇する傾向にあります。これは景気後退の有無にかかわらず当てはまります。景気後退期に初めて利下げが行われた後の1年間の平均リターンは4.98%であるのに対し、景気後退を回避した時期では16.66%となっています4。ただし、景気後退期には最初の利下げ後の下落幅が大きくなり、平均最大下落率は20%に達したのに対し、景気後退を回避した時期では5%にとどまりました5


世界的に見て、景気後退が起きた場合に経済を救う「白馬の騎士」は存在しません。中国は15年前の世界金融危機時のような大規模な景気刺激策を実施する意思をほとんど示していません。欧州と日本も同様に、世界経済の「機関車」としての役割を果たす意思も能力も持ち合わせていません。また、米国では選挙の年であることから、迅速な財政出動も期待できません。


このようなグローバルな制約要因を考慮すると、FRBが利下げに踏み切るという好材料が出ても、市場の反応は鈍くなる可能性があります。

 

【文末脚注】

1. CBOEマーケット・ボラティリティ・インデックス(VIX)は、S&P500株価指数オプション価格に反映される短期的なボラティリティに対する市場の期待を測定します。「恐怖指数」とも呼ばれ、低い数値はリスクが低いと認識される環境を、高い数値はボラティリティが高い期間を示唆します。指数は運用されておらず、直接投資することはできません。また、手数料、経費、販売手数料は含まれていません。
2. ここでの「キャリートレード」は、日本円を借り入れて、より高利回りの通貨に投資することを指します。
3. 出所:CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)。2024年8月5日時点。予想、見通し、または予測が実現する保証はありません。
4. 出所:NBER、セントルイス連邦準備銀行、DJII。フランクリン・テンプルトン・インスティテュートによる分析。1972年1月1日から2024年7月31日まで。指数は運用されておらず、直接投資することはできません。過去のパフォーマンスは将来の結果を示唆または保証するものではありません。
5. 同上。

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●当資料は、フランクリン・テンプルトン(フランクリン・リソーシズ・インクとその傘下の関連会社を含みます。以下「FT」)が作成した説明資料を、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が翻訳したものです。
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