(※写真はイメージです/PIXTA)

クリニックを経営していた高齢ドクターが引退。2人の息子たちは相続対策を心配しますが、相談した父親本人から、衝撃の発言が…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、について解説します。

子どもは?」「ひとりいる。一度も会っていないけど…」

すかさず突っ込んだのは、弟のほうでした。

 

「お父さん、最初の結婚で子どもは?」

 

「ひとりいる。生まれる前に別れたので、一度も会っていないけど…」

 

鈴木さんと弟は、初めて聞く話に仰天しました。

 

「その発言を聞くまで、まったく知らなかったし、想像したことすらない話でした」

 

鈴木さんの父親は、学生時代に一度、同じ大学の同級生と結婚したものの、結婚生活はすぐに破綻。養育費は、両親(鈴木さんの祖父母)が肩代わりして一括で支払い、それ以来会ったことはないといいます。

 

父親はいままで先妻や先妻との子どもとはまったくの没交渉で、普段は存在も忘れているようなありさまです。相続問題に発展するとの危機感もありません。

相続対策の第一選択肢は「公正証書遺言」

しかし、鈴木さんと弟にとっては大問題です。このまま何も手を打たずに相続が発生すれば、会ったこともない異母きょうだいを探し出し、遺産分割協議に協力してもらわなければなりません。双方にとって大変なストレスとなることは目に見えています。

 

「この問題、どのように対応したらいいんでしょうか?」

 

鈴木さんのようなケースにおいて必須となるのは、公正証書遺言です。

 

 

提携先の司法書士の説明を受けた鈴木さんは、その場で遺言書の作成を決断しました。

 

「すぐ弟に連絡します。父親も説得します」   

公証人、証人は出張できる

鈴木さんの父親は普段ひとり暮らしで、日常生活に支障はなく、意思確認も問題ありません。しかし、足が少し弱っていることから、電車を乗り継いで公証役場に行くのは不安があることと、鈴木さんが付き添いで行くにしても、公証役場が稼働している平日には休めないため、対応が難しいといいます。

 

そこで、鈴木さんのクリニックのお昼休みに遺言書作成ができるように、公証人と証人が父親の自宅に出向いて作成できるよう段取りしました。

 

高齢や体調により外出が難しい方でも、出張サービスを利用することで遺言書を作ることができます。多少の出張費がかかりますが、それでも作れる安心感はあります。

想定外の相続人の登場、相続の現場ではよくある話

当日、父親は遺言書の内容について、しっかり受け答えし、署名、押印も行い、問題なく公正証書遺言ができあがりました。鈴木さんも、弟も、ようやく安堵できたといいます。

 

遺留分の問題は残るものの、それでも遺産分割協議をすることなく、不動産の名義が変えられ、金融資産も遺言書で手続きできるようになります。

 

「放置していたら、大変なことになるところでした。相談して本当によかったです」

 

将来、もし介護施設への入所などがあった場合は、不動産の処分をするなどして遺留分対策もしておきたいとのことでした。

 

家族が亡くなったあと、想定外の相続人の登場に驚く方は少なくありません。事情を把握しておらず、対策をしないまま相続が発生し、大変な事態に陥るケースもあるのです。話しにくいとは思いますが、心当たりのある方は、家族のため、事前に事情を知らせておきましょう。また、子どものほうも、日頃から親とコミュニケーションをとっておき、状況を把握しておくことが大切です。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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