今週の注目点=加速する米利下げ予想
この状況のなかで、米ドル/円は、足下で150円程度の52週MA(移動平均線)を大きく割れています(図表5参照)。
経験的には、円安トレンドのなかの、あくまで一時的な円高に過ぎないのであれば、52週MA前後までだといえます。ただし、52週MAを本格的に下回ってくるようであれば、すでに円安レンドは161円で終わり、数年続く円高トレンドへ転換した可能性が高くなります。
その意味では、目先の動きはまだギリギリ「一時的な円高」の可能性を残しています。さらに145円も大きく割れる場合、いよいよ円高トレンドへ転換した可能性が高まるという、重要な分岐点を迎えているといえます。
ところで、米ドル/円に大きく影響する米10年債利回りは、足下4.3%の52週MAを大きく割り込み、すでに金利低下トレンドへ転換した可能性が、高くなりつつあります(図表6参照)。
米金利低下がここに来て加速した背景には、米景気減速への懸念が高まったことが考えられます。これは、2日に発表された米7月雇用統計が、予想よりかなり弱い結果となったことが、ひとつの原因として挙げられるでしょう。
先週は後半にかけて、景気の先行指標でもある、米国の主要な株価指数も急落となりました。これを受け、米利下げについても、次回9月FOMC(米連邦公開市場委員会)前の緊急利下げや、0.5%以上の大幅利下げ予想も浮上してきました。
今週は、ISM(米供給管理協会)非製造業景気指数などの発表が予定されていることから、それらの結果や株価動向を受けて、利下げ予想の変化の有無が大きな焦点になりそうです。
一方で、投機筋の米ドル買いポジションについては、最近にかけての米ドル急落により、含み損が増えている懸念もあり、米ドル反発局面では、損失を確定する米ドル売りが上値を重くすることが予想されます。
以上を踏まえ、今週の米ドル/円の予想レンジは144~150円中心で、米ドル反発の限界を確認する展開を想定します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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