「フィリピン・大型インフラ整備」で存在感増す日本…JICA融資総額、昨年度上回る見込み

8月5日週「最新・フィリピン」ニュース

「フィリピン・大型インフラ整備」で存在感増す日本…JICA融資総額、昨年度上回る見込み
写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、フィリピンの経済成長にとって最も重要ともいえるインフラ整備について解説していきます。

JICAによる融資総額、2023年度を上回る見込み

今年度の国家施政方針演説(SONA)でマルコス大統領が言及したプラリデルバイパス道路、マニラ首都圏地下鉄、南北通勤鉄道(NSCR)のプロジェクトにJICAが関与していると述べました。これらのプロジェクトについては、すでに財務省とJICAの間で融資契約が締結されていますが、巨額の資金需要を満たすためには、JICAによるさらなる資金支援が必要となる可能性があるとしています。

 

今年度のJICAによる融資総額についてはまだ確定していませんが、昨年度の3,000億~4,000億円(約1,150億~1,530億ペソ)を上回る予定です。3月には、マニラ首都圏地下鉄プロジェクトの第1フェーズに対する1,500億円(約570億ペソ)の融資契約の第3弾が、財務省とJICAの間で締結されました。総額8,730億ペソの南北通勤鉄道(NSCR)は、JICAとアジア開発銀行が共同融資するプロジェクト。ブラカン州マロロスとクラーク国際空港、マニラ・トゥトゥバンとラグナ州カラバを結ぶ147キロメートルの路線で、35駅と3つの車両基地を備える予定です。

 

JICAの調査によると、首都圏の慢性的な交通渋滞によるフィリピン経済への損失は1日あたり35億ペソに上り、道路を近代化し、近代的な鉄道システムと組み合わせることが必要です。JICAは、運輸省、公共事業・高速道路省、首都圏開発庁(MMDA)と協議。さらに、JICAはMMDAと新たな技術協力を行い、同庁のインテリジェント交通システムを近代化する計画です。


フィリピン政府は財政が限られているため、主要プロジェクトの資金調達は、政府開発援助(ODA)に大きく依存しています。2022年のフィリピンのODA総額は99億6,000万ドルで、そのうち日本の割合は30.75%と第2位の供給国となっています。

「インフラ」&「物流」がフィリピンの成長を次のステージへ

S&Pグローバルはレポートの中で、インフラと物流の著しい改善がアジア新興国の次の成長段階を支えると指摘。またインフラの効率運用に加え、インフラへの投資を加速させることで、より高い成長率を実現できるとしています。インフラプロジェクトが加速すれば、アジア太平洋地域の経済は2023年の6.6兆ドルから2033年には約2倍の11.4兆ドルに達する可能性があると予測。これは年率約5.5%の成長率に相当します。

 

フィリピンでは国家経済開発庁(NEDA)が、マニラの新空港や、スービック、マニラ、バタンガス港を結ぶコリドールの建設など、主要なインフラプロジェクトを推進しています。インフラ建設はBBM(Build Better More)と呼ばれるマルコス政権の優先投資分野のひとつです。NEDAはこれまでに総額9.5兆ペソの185のインフラ旗艦プロジェクトを承認しています。これらのプロジェクトは、物理的・デジタル接続性、水資源、農業、保健、エネルギーなどをカバー。政府は、インフラに毎年GDPの5~6%を支出することを目標としています。

 

しかしインフラプロジェクトの投資回収期間は20年以上と長いため、民間セクターにとってリスクが高く、公共部門がインフラプロジェクトを主導する傾向にあります。一方で地域全体の経済規模に対する公共資産の比率は大きく上昇していません。フィリピンでは公共固定投資資産が比較的低いものの、公共民間パートナーシップ(PPP)による資本資産は世界平均を上回っています。

 

政府はPPPプロジェクトの推進にも力を入れており、マルコス大統領は昨年12月にPPPの枠組みを合理化するPPP法に署名しました。物流セクターについては2014年以降、最も大きな改善を示しています。

 

一方、電力需要の増加に伴い、電力セクターへの投資を増やす必要性があります。フィリピンでは2024年から2025年の電力需要が5~7%増加すると予測されています。フィリピン政府は、再生可能エネルギーの電源構成比を2030年までに35%、2040年までに50%に引き上げることを目指しています。

 

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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