前回は、親の死後に判明した「隠し子」の存在が財産分配にどう影響するのかを説明をしました。今回は、相続財産の「由来」の重要性について見ていきます。

割れた茶碗、黄ばんだ掛け軸・・・実は高価な骨董品!?

親がどういった資産を抱えているか、相続対策を考えていく上では知っておくべきです。
しかし、自宅のほかに不動産が3件、土地が2か所と、その数や所在だけを把握しているような場合、後に問題になることがあります。

 

たとえば、親がある土地について思い入れがあり、とても大切にしていたとします。それを聞かされていない子はそんなことを知らずに、相続税として物納してしまいました。後になって親戚から、「あの土地は実はもともとうちの一族の土地で、一度は手放してしまったものをあなたのお父さんが必死になって買い戻したのよ」などと聞かされたらどうでしょう。後味が悪く「他の土地にすればよかった」と後悔するでしょう。

 

建物で言えば、アスベスト(石綿)を使っていないかなども重要です。アスベストは肺がんなどの人体被害を起こす危険があります。撤去するにも費用が嵩かさむので、あらかじめ把握しておかなくてはなりません。

 

いわくつきの土地というのもあります。なぜかその土地を売買しようとすると不幸事が起きたり、自殺者が出たり、墓地があった場所だったり……。気になる場合は聞いたり調べたりして対処をしておきましょう。

 

不動産以外では、たとえば骨董品があります。親が骨董品を集めるのが趣味で、子はまったく興味がないという場合も、よく聞いておいてください。素人目にはただの割れた茶碗、黄ばんだ掛け軸にしか見えないものが、非常に高額だったりします。「ただの安物」のはずが「実はウン百万、ウン千万でした」となると、相続財産が膨れ上がって相続税にはね返ってきてしまいます。親には骨董品の真贋やいわれなどは聞いておくべきです。

 

骨董品では、こういった事例がありました。あるクライアントの父親に、大変な骨董品の収集家がいました。価値のある品がたくさんあったのですが、母親もクライアントであるご子息もまったく興味がありませんでした。

 

父親は、「どうせ俺が死んだら、妻も子も価値も分からず売ってしまうのだろう。たぶん安く買い叩かれて終わりだ」と思い、趣味の合う骨董仲間にコレクションのいくつかをあげてしまっていたのです。それは父親が1人でしたことで、母親やクライアントは当然知りませんでした。

 

父親が亡くなり相続が発生すると、税務調査が入り、そこでコレクションの数と購入記録が合わないことを指摘されたのです。母親は「たぶん人にあげたか売ったかしたと思うのですが……」と答えますが、人に譲った証拠も売った証拠も提示することはできません。税務職員は「財産隠しをしているのでは」と疑いの目で見てきます。

 

たまたま私が生前に、この父親から誰に渡したかを聞いていたため、難を逃れましたが、誰も知らなければ追加で相続税を支払わなくてはいけなかったでしょう。

家族間で情報を共有できれば防げる問題

資産にまつわるドラマや背景、資産をとりまく状況や問題点などは、親が亡くなってしまうと後から聞くことはできません。「どういう経緯で手に入れたのか」「どうして大事にしているのか」「将来的にどうしようと思っているのか」などを親に聞き出しておくべきです。

 

生前に資産を取り巻く状況を家族で共有できていれば、その土地を売ったり買ったり、建物を建てたりといった資産の組み換えも検討できますし、相続の時に売却するならどの土地が一番良いかも検討しておくことができます。

 

子の方でも、何か希望があるのなら、相続発生前に、さらには生前対策を始める前に、相談するのが良いでしょう。

本連載は、2014年8月25日刊行の書籍『相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと

相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと

大久保 栄吾

幻冬舎メディアコンサルティング

額の大きな相続は、しっかり対策をとらないと相続税が大変。だからといって親が生きているうちから子が積極的に相続対策に関与することは「縁起でもない」ということで、なかなか難しい。 本書では親が生きているうちから、子…

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