前回は、「戦略的な株式移譲」で会社を安定的に引き継ぐ方法を説明をしました。相続・事業承継対策として「法人保険」を活用する方法を見ていきます。

複数人での保険加入が節税につながる理由

同族会社を経営している人は、法人保険(経営者保険)を活用します。法人保険に入ることで、まず会社の節税になります。経営者の退職時に解約すれば、返戻金を退職金に充てられます。経営者の死亡時には保険金が支払われ、相続税納税資金に充てられます。

 

法人保険というのは、会社社長や役員、従業員を被保険者にし、保険料負担者および受取人を法人にして入る保険のことです。保険料を毎月会社が支払うことで会社の利益が減らせます。

 

また、法人保険の中には、払込保険料の半額もしくは全額が経費扱いになる保険もあります。経営者だけでなく役員や従業員など複数で加入すれば、それだけ保険料が増えるので会社の利益圧縮になり、節税につながります。経営者(親)が退職するタイミングで解約すると、返戻金が支払われます。

 

これを退職金として親が受け取れば、会社の利益にはなりません。返戻金は通常、払込保険料の70~90%程度です。1億円の保険なら7000万円、多ければ9000万円くらい戻ってきますから、親の老後の生活の不安が少なくなります。

最大3000万円の保険金受け取りでも相続税ゼロ!?

70歳で事業継承する計画ならば、40代のうちに保険に入っておき、70歳あたりで解約返戻金が高くなるように設計しておいてもらいます。次に、経営者(親)が現役の間に死去する事態になった時は、保険金が会社に支払われます。これを退職金に充てます。

 

死亡退職金には生命保険の相続人1人当たり500万円非課税とは別に、相続人1人当たり500万円が非課税になる特典があります。相続人が3人いれば1500万円まで相続税がかかりません。

 

個人で1500万円の生命保険に入り、会社で1500万円の生命保険に入っておくと、3000万円を受け取っても相続税はゼロです。

 

同族会社を経営している人なら、少なくとも退職金の非課税枠までは法人保険に入っておくほうが良いでしょう。

本連載は、2014年8月25日刊行の書籍『相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと

相続貧乏にならないために 子が知っておくべき50のこと

大久保 栄吾

幻冬舎メディアコンサルティング

額の大きな相続は、しっかり対策をとらないと相続税が大変。だからといって親が生きているうちから子が積極的に相続対策に関与することは「縁起でもない」ということで、なかなか難しい。 本書では親が生きているうちから、子…

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