検査済証のない既存住宅はさらに大きな手間・時間と費用が必要
第三の問題は、「検査済証」のない住宅の手続きです。
建築物の新築時には確認申請手続きを行い、「確認済証」が交付されてから着工します。そして建築工事が完了した際に、確認申請通りに工事が行われたことを現地で確認を受けて、「検査済証」の交付を受けます。あらたに、確認申請手続きが必要な大規模修繕等の工事を行う際には、「検査済証」が手元にあることが前提となります。
最近の新築建築物は、「検査済証」の発行を受けるのが当たり前になっていますが、以前はそうではなかったのです。国土交通省によると、平成11年以前は、「検査済証」の交付を受けていない建物が過半を占めています。フルリノベニーズが高い築40年前後の建物となると、その比率は間違いなくさらに高くなります。
大規模修繕等を行う際の確認申請の手続きでは、建築時点の建築基準法令に適合していることを確かめる必要があります。そのため、「検査済証」がないままでは、大規模修繕等のための確認申請を行うことはできません。そこで、まず現況の図面起こしからはじめて、法適合状況の調査を行うことが必要になります。
ところが、さらにやっかいなのが、法適合状況調査の手続きは、その建物がある行政によって異なっているのです。国土交通省が定めた法適合状況調査(検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン)に基づく運用をしている自治体と、そうではなく、一級建築士事務所による調査でよいとしている自治体等、対応が分かれているようです。
国は、新たなガイドラインの策定を進めているとも聞きますが、少なくても現時点では、「検査済証」がない戸建住宅のリノベの手続きが来年4月以降どうなるのかは、極めて不透明です。
いずれにしても、フルリノベを行う際の手間と費用と着工までの時間がまったく変わってきます。特に改正法施行からしばらくの間は、業界が大混乱することが予想されます。そのため、フルリノベを行おうにも、いつ着工できるか、まったくわからない状況に陥る可能性が高いことを住宅業界は懸念しています。
悪徳リフォーム会社がはびこる事態に?
今回の制度変更でもう一つ大きな問題があります。それは、確認申請が必要なリノベなのかどうかが、あいまいなところがあり、おそらくリフォーム会社・工務店によって、判断が異なってくるということです。
フルリノベになれば、確認申請が必要になることは明らかです。ですが、おそらく、この手続きを踏まないでも工事を請けるコンプラ意識の低いリフォーム会社・工務店が出てくると思います。遵法意識の高いリフォーム会社・工務店が工事を請けようにも請けられない事態になれば、コンプラ意識の低い悪徳リフォーム会社にリノベを発注せざるを得なくなると思われます。
今回の法改正は、遵法意識の高い優良なリフォーム会社・工務店が淘汰され、悪徳リフォーム会社がはびこる事態も引き起こしかねません。
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