7/15週を“もしトラ相場”の典型と仮定するとみえてくること
7/15週の動きを総合すると、そしてその動きを“もしトラ”の典型と仮定するなら、
1.米連邦準備制度理事会(FRB)への利下げ圧力もあって景気後退はなさそうだが
2.規制強化(半導体? 他には?)や米国内への生産回帰、関税引き上げを含む保護主義の圧力などによって、インフレ・リスクや対中関係での瀬戸際外交が生じて、変動性が高止まりしそうであり
3.規制緩和(原油や自動車?)や戦争の終了など影響を受けるセクターがめまぐるしく変わる可能性もあり、セクター・ローテーションも必要になりそうだ
ということかもしれません。
予想どおりの変動性、予想より早く来た“ほぼトラ”
そもそもトランプ氏が大統領になれば、先週のような変動性は想定できたと思われます。
前回のトランプ政権時の政策を想像すればおわかりのとおり、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉やパリ協定からの離脱、太陽光パネル・鉄鋼・アルミなどへの関税、対中関税、北米貿易協定(NAFTA)の改定、メキシコとの国境壁建設、日本との物品貿易協定の交渉開始、米連邦準備制度理事会(FRB)への利下げ圧力など、トランプ政権になれば、企業優遇の姿勢や関連政策は企業利益を押し上げる好材料です。
しかし、アメリカ第一主義であるため、貿易面では保護主義で変動性は大きくなること(→中国製品への関税引き上げ、日本への円安是正要求)、国防・軍事面ではNATOや日本に対してもずっとそうであったように、台湾に対しても、防衛の自己負担を増やしていくように求めることも想像に難くなかったと思います。
まったくのうがった見方・邪推をすれば、トランプ氏はパウエルFRB議長に対して「バイデン氏を利する可能性のある利下げはすべきではない(→利下げは自分が大統領に返り咲いてからにしてくれ?)」と主張しているように、「バイデン政権のうちに株価が調整する分は、バイデン政権のせい。自分の政権時の発射台は低いほうがいい」と思っているのかもしれません。
もしそうであれば、いまのうちはハードラインで、まだまだ変動性は高くなるかもしれません。というよりも、選挙ですから支持を得るために、ハードラインで行く必要があります。この点、2019年当時も「ギリギリまで中国へのハードラインで株価を調整させ、選挙イヤーの直前で急転直下合意に達して株価を戻すつもりではないか」と言われていました。
まとめると、7/15週の動きは想定どおりであり、想定できなかったのは“ほぼトラ”が早く来たことだと思われます。今後とも変動性の高さに備えるほうがよいでしょう。
ただ、まだ「確トラ」ではない
ただし、まだ「次の米国の大統領は、トランプ氏で決まり」ではありません。多くは言えませんが、「だってそうでしょう!?」ということですし、ほかのことが起きる可能性も考えられます。
また、トランプ政権になるとしても、台湾の防衛を含め、実際の政策はわかりません。
対策は分散投資しかないでしょう。
幅広い分散投資はワークする可能性が高いと見られますから、引き続き分散をされてください。トランプ政権では変動性は大きくなりますから、分散の意義はさらに高まるということに尽きると思います。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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