日本の投資家が「円」に魅力を感じないのはなぜか?
エコノミストの唐鎌大輔氏が『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経プレミアシリーズ)という本を出されています。ごく簡単にいえば、現在の日本は円売りが出やすい構造であり、しかも、円を売りたい人が増えているということです。
他方で、筆者には、別の感覚があります。それは、
・「弱い円の正体」は、「弱いドルの身代わり」ではないか。
・ファンダメンタルズが弱いドルを、(やはり、ファンダメンタルズが弱い)円が弱くなることで隠しているのではないか。
・「強いドルの正体」は、「弱い円」ではないか。
というものです。
日本国内では「弱い円」が自虐ネタのように扱われますが、ドルのファンダメンタルズに焦点が当たるほうが影響は大きいように思えます。
こういうと、「ドル金利の高さは、米国経済の強いファンダメンタルズを反映している」、「ドルの強さは、他国との金利差や成長率の格差を含め、米国経済の強いファンダメンタルズを反映している」、「米国テクノロジー株式のバリュエーションの高さは、米国企業の高い競争力を反映している」といった答えが返ってくるかもしれません。
しかし、こう考えてみればどうでしょうか。「米国は、①ドルと米国債の価値を維持するために、②経常収支や財政収支の赤字をファイナンスするために、③ドルの準備通貨としての地位を守るために、米国の資産を魅力あるものに見せる必要がある」。こう考えても現状を説明できるかもしれません。
そして、米国の資産に魅力を感じているのは、ほかでもない、日本の投資家でしょう。同時に、日本の投資家は、自国の資産に魅力をあまり感じなくなっているようにみえます。
だとすれば、日本の投資家はなぜ、米国の資産に魅力を感じ、自国の資産に魅力を感じなくなっているのでしょうか。これは、big questionかもしれません。