過去最大規模の投機的円売りは「曲がり角」を迎えた?
この米ドル安・円高は、8月にかけて、さらに続くところとなるのでしょうか? 事実としていえるのは、過去2年間では7月に比較的大きく米ドル安・円高となったものの、8月は、米ドル高・円安が再燃しました(図表7参照)。
それでは、今回も7月の円高はあくまで一時的な動きにとどまり、8月は円安再燃となるのか。
過去2年間は、7月に米ドル/円急落が起こりましたが、それは120日MAを割れるまでには至りませんでした。そのなかで、ポジション調整は限定的にとどまり、8月以降、米ドル買い・円売り再開に向かったと考えることは可能です。
この観点でいえば、今回は、120日MAを米ドル/円がすでに比較的大きく割れている点が、過去2年間の7月との違いであり、米ドル買い・円売りポジションの調整も、より大きくなった可能性があります。
そのうえで、過去2年間と異なり、米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いがさらに続くのか、それとも改めて米ドル買い・円売り再開に向かうかは、足下で154円台半ばに位置する120日MAを大きく回復できるかどうかが、1つの手掛かりになるのではないでしょうか。
それにしても、歴史的円安は、あの161円で終わったのか。それとも、7月に大きく円高に戻した動きのほうが、あくまで「一時的」に過ぎないのか。それを判断するためには、52週MAとの関係が手掛かりになりそうです。
経験的に、トレンドと逆行する一時的な動きは、52週MA前後までがせいぜい。そして、52週MAを本格的にブレークすると、すでにトレンドが転換した可能性が高まります。
52週MAは、足下で150円程度なので、米ドル/円の下落が150円前後までにとどまるようなら、歴史的円安はまだ終わっていない可能性があります。そうではなくて、150円を米ドル/円が「大きく」、または1ヵ月以上など「長く」下回るようであれば、ついに歴史的円安は終了し、円高へトレンド転換した可能性が高いといえます(図表8参照)。
8月は、円高が一時的か、それとも歴史的円安がついに終了したかを見極める局面になりそうです。私は、大幅な日米金利差の「米ドル優位・円劣位」を主な拠り所として、過去最大規模で展開した投機筋の米ドル買い・円売りも、曲がり角を迎えている可能性があると考えています。
そうであれば、米ドル/円は、120日MAを大きく越えられず、米ドル買い・円売りポジション・クローズの動きが続く可能性が高いといえます。以上を踏まえ、8月の米ドル/円は148~156円のレンジで予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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