(※写真はイメージです/PIXTA)

相続トラブルはお金持ちの家庭に限られるものと思われがちですが、実際には相続財産が5,000万円以下の家庭で多く発生しています。最高裁判所の調査によると、2015年の遺産分割調停事件のうち、32%が相続財産1,000万円以下、43%が1,000万円超5,000万円以下の事案です。相続争いは、多くの家庭にとって他人事ではないのです。本稿では、Authense法律事務所・大阪オフィスの三津谷周平弁護士監修のもと、相続トラブルの典型的なケースや、未然に防ぐための方法、争いが発生した場合の対処法について解説します。

親から兄弟姉妹の誰かが生前贈与を受けている場合

兄弟姉妹の誰かが被相続人から多額の生前贈与を受けている場合も、やはりトラブルとなり得るケースといえます。

 

この場合に、遺産を単純に相続人の人数で分割するとなると、生前贈与を受け取っていない兄弟姉妹からしてみれば、均等な配分ではないとして、不公平感を感じることでしょう。

 

この場合は生前贈与が「特別受益」として認められるかどうかがポイントです。特別受益とは、相続人の中に被相続人から遺贈や生前贈与という形で特別な利益(例えばマイホームの購入資金を贈与された等)を受けた者がいる場合の、その相続人が受けた利益のことです。

 

特別受益の存在が認められるならば、相続開始時に実際に残されている相続財産の額と合算した上で、各相続人の相続分を決め、特別受益を受けている相続人についてはその相続分から特別受益分を差し引いた分を最終的な相続分とすることで、各相続人間の公平を図ります。これを「特別受益の持ち戻し」といいます(民法第903条)。

 

しかし、多額の生前贈与を受けた相続人が、特別受益を受けたことを認めないと、協議がまとまらず、前述した寄与分のケースと同様に家庭裁判所での調停・審判という形で解決が図られることもあり得ます。

遺産を子の誰かが独占したり遺言書が相続人1人に遺産を全て渡す内容だった場合

相続が開始されたとき、兄弟姉妹の誰かが遺産を独占し他の相続人との分割に応じない場合でも、遺産分割協議を行い、他の兄弟姉妹が納得しなければ、遺産の独占は認められません。

 

一方、遺言書が兄弟姉妹の誰か一人に遺産を全て渡す内容であったとしても、遺産を得られない相続人は「遺留分」を主張することができます。

 

遺留分とは

 

遺留分は、一定範囲の法定相続人に最低限認められる遺産取得割合のことです(民法第1042条)。

 

(1)遺留分が認められる人

 

被相続人から見た場合、次の人には遺留分が認められます。

 

・配偶者

 

・子(子が亡くなっていた場合は孫)

 

・直系尊属(親・祖父母等)

 

子である兄弟姉妹には、遺留分が認められます。

 

(2)認められない人

 

被相続人から見た場合、次の人には遺留分が認められません。

 

・被相続人の兄弟姉妹と甥・姪

 

・相続放棄した人

 

・相続欠格者・被相続人から廃除された相続人

 

被相続人の兄弟姉妹は遺留分を主張できません。また、相続放棄をした人は遺留分も失います。

 

その他、被相続人を殺害しようとした人や遺言書を隠そうとした人(相続欠格者)、被相続人に虐待・重大な侮辱等を行い被相続人から家庭裁判所へ相続人廃除を申し立てられ、相続人資格を奪われた人は、遺留分も認められません。

 

子である兄弟姉妹が主張できる遺留分の割合について

 

相続人が子のみの場合、子全体の遺留分の割合は1/2ですが、実際に各々が主張できる個別的な遺留分は、相続する子の数で変わります。例を挙げてその割合を見てみましょう。

 

(1)兄Aが全財産(1,200万円相当)を遺言で取得、他に弟Bが1人がいる場合

 

子全体での遺留分割合は全体の1/2:600万円

 

→個別の遺留分は、全体の遺留分割合に、個々の法定相続分(今回の例では、相続人が子2人なので、弟Bの法定相続分は1/2)を乗じて算出

 

→弟Bの遺留分は600万×1/2=300万円となり、弟Bは遺留分である300万円を兄Aに請求可能です。

 

(2)兄Aが全財産(1,200万円相当)を遺言で取得、他に弟B・妹Cの2人がいる場合

 

子全体での遺留分割合は全体の1/2:600万円

 

→個別の遺留分は、全体の遺留分割合に、個々の法定相続分(今回の例では、相続人が子3人なので、弟B、妹Cのそれぞれの法定相続分は1/3ずつ)を乗じて算出

 

→弟B、妹Cの遺留分は600万×1/3=200万円ずつとなり、弟B・妹Cはそれぞれ自己の遺留分である200万円を兄Aに請求可能です。

 

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