増え続けている遺産相続争いの原因
相続のトラブル件数は年々増加傾向にあり、特に、遺産相続の争いは遺産総額が5,000万円以下の家庭で最も多く起こっています。
遺産相続のトラブルは、たとえ家族、兄弟、親族の仲が良くても起こりうる問題です。遺産相続で揉める原因は、相続人(故人の財産を引き継ぐ人)、被相続人(財産を家族等に引き継いでもらう人)の双方に存在するものと考えられます。
以下、想定される相続人と被相続人の揉める原因についてそれぞれ解説していきます。
相続人側に原因がある場合
もともと相続人間の仲が悪いもしくはあまり良くないようなケースが挙げられます。被相続人の配偶者と子または子ども達が不仲で、かつ疎遠になっているような場合は、相続人同士で集まったとしても、うまく話合いができずトラブルに発展するおそれがあります。
相続人間で遺産分割協議を行いきちんと分配できたり、被相続人の遺した遺言書に従って遺産の引継ぎが不満なく行われたりすれば揉めることもないでしょう。
しかし、遺産分割協議を行っても相続人間で納得のいく遺産分割が難しい(例:建物・土地等の分けるのが難しい不動産資産がある場合)場合や、遺言書の内容が特定の相続人ばかりを優遇するものだった場合、遺産相続争いに発展する可能性があります。
被相続人側に原因がある場合
被相続人の所有する財産が多数あり、相続人が複数いるにもかかわらず遺言書を作成せず、相続人に遺産分割をすべて任せたり、たとえ遺言書を作成していても、特定の相続人に偏って財産を譲渡するような内容だったりした場合、遺産相続争いに発展するおそれがあります。
また、例えば被相続人に前妻の子がいた場合、前妻の子には相続権があります。他の相続人に前妻の子の存在を隠したまま亡くなってしまい、後日、他の相続人達にその事実が発覚すれば、新たな相続人の登場で話し合いが混乱する事態も招いてしまうでしょう。
仲が良くても起こりうる…遺産相続の3つの典型トラブル
遺産相続争いは、仲の悪い相続人達との間だけで発生するとは限りません。仲の良い兄弟姉妹の場合でも起こり得ます。主にトラブルとなるケースをいくつか解説します。
兄弟姉妹の誰かが寄与分を主張している場合
寄与分とは、相続人が行った被相続人への貢献を遺産分割に反映させる制度のことです。被相続人が遺言書を残していなかった場合、民法で定められた「法定相続分」によって、遺産配分の割合が決められています(民法第900条)。
例えば相続人が子ども(兄A・弟B・妹Cの)3人の場合、それぞれの法定相続分は、1/3:1/3:1/3となります。
ここで例えば、妹Cが長年被相続人である親の介護をしていた場合、介護ヘルパー等に頼めば費用がかかるところを全て自分でやっていたため親の財産の維持に貢献、すなわち寄与したとして、寄与した分だけ遺産を多めに取得したいと主張するというケースもあります。
被相続人の遺言書がなく遺産を誰に渡すか決められていない場合、遺産分割協議を行い、兄A・弟B・妹Cで、妹Cの意見も踏まえ、介護等の事情も考慮して遺産配分の割合を検討することが必要になります。
しかし、万が一、他の兄弟が妹Cの主張に納得をせず、話がまとまらない場合には、家庭裁判所で調停・審判という形で解決が図られることもあり得ます。
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