高名な経済学者ですら見落としている「2つ」のこと
高名な経済学者やエコノミストでも為替経済学の2つの基本に無知である場合が多い。第1はJカーブ効果である。
円安の初期には「実質所得の減少」というマイナスが一気に顕在化する。しかし時間が経つとマイナスは消えていき、プラスの生産数量増、設備投資増、生産性上昇と賃金上昇という好循環が長期にわたって続くのである。
第2の無知は、為替は現実経済を投影するものではなく、将来の競争条件と国際的分業配置を形づくる原因になるということだ。いわば履歴効果である。
30年前、異常に競争力が強かった日本を弱体化させるため、覇権国米国は超円高を誘導し、その意図通りにあれほど強かった日本のハイテク産業は衰退し、日本に集中していた産業集積は韓国、台湾、中国などの東アジア諸国に移転した。
世界一の高物価国になった日本から工場も雇用も資本も海外に流出し、日本産業は空洞化した。また世界水準からみて異常に高くなった賃金や土地に大きな引き下げ圧力がかかり、長期デフレを定着させた。
円安が形成した巨額の購買力プール(企業利益と税収の急増)
いま進行中の円安は、過去30年間とは逆に「日本企業の競争力強化」を引き起こし、日本が産業大国として復活する土台となる。この円安とインフレ(=名目経済成長の高まり)がすでに、企業利益、株価、税収を大きく押し上げている。
2023年度の法人企業経常利益は108兆円(11年前比2.5倍増)、税収は72.1兆円(11年前比1.6倍)、GPIF累積運用益153.8兆円(11年前比4.3倍)、東証株式時価総額1,004兆円(11年前比3.3倍)と、目を見張る価値創造が実現している。
それが2023年に予想される過去最高の設備投資増加、34年ぶりの5.08%の賃上げをもたらし、巨額の購買力のプールを形成している。
日本が、先進国としては珍しい潜在成長率が高まる時代に入りつつあることは、ほぼ明らかである。「円安悪玉論」は事実によって完膚なきまでに否定されていくだろう。
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