日本は「10兆円」の税収増!? 政府は国民にお金を返還するべきだが…歴史的な円安のなか、財務省が“隠そうと躍起になっている”不都合な真実【経済の専門家が解説】

日本は「10兆円」の税収増!? 政府は国民にお金を返還するべきだが…歴史的な円安のなか、財務省が“隠そうと躍起になっている”不都合な真実【経済の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

足元の歴史的な円安相場について、高名な経済学者やエコノミストからの批判が巻き起こっています。しかし、経済の専門家で株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は、こうした「円安悪玉論」を一蹴します。その理由と、財務省が“隠そうと躍起になっている”不都合な真実を詳しくみてきましょう。

政府に求められる国民への「富の返還」

円安で恩恵を受けるなか、「増税」はつじつまが合わない

たしかに、現時点においては円安のデメリットを受け続け、繁栄の波に入れていない個人を救済する必要があるが、その処方は明らかである。インフレによって潤った財政が恒久減税という形で、インフレによって富を奪われた国民にお金を返還するべきであろう。

 

名目経済率が1の時にどれだけ税収(中央政府+地方政府+年金基金)が伸びるかを、税収弾性値というが、諸外国が1.0~1.2であるのに対して、日本は2.6~3.6と異常に高くなっている。

 

その理由は、消費税増税や社会保険料引き上げという実質増税が続けられてきたからである。このことは原田泰氏の近著「日本人の賃金を上げる唯一の方法」(PHP研究所)で詳しく論じられている。

 

そのため、期せずして起きたインフレにより税収が大きく増加しているのである。増税をしなくても2025年度プライマリーバランス黒字化が達成できそうになってしまったということで、財務省は税収増を隠そうとして躍起になっている

 

2023年度の一般会計税収は72.1兆円、前年度比1.4%増にとどまったが、これはつじつまが合わない。名目GDP5.7%増に原田氏試算の税収弾性値をかけ合わせると、下限の2.6を用いても10兆円の税収増と計算される。

 

連結決算企業の納税方法の変更、等テクニカルな減収要因が編み出され、表面税収が抑えられたとみられる。予算の使い残し(不用額)と税収増により財政余剰金が高まり、国債整理基金が大幅に積み増されている。

 

さらに政府にはインフレ税収増に加えて1.2兆ドルにのぼる米国国債保有にともなう為替益数十兆円が、「埋蔵金」として蓄えられている。円安とインフレ化により日本財政は著しくパワフルになっているのである。

 

出所:原田泰「日本人の賃金を上げる唯一の方法」(PHP研究所)
[図表3]一般会計税収での税収弾性値 出所:原田泰「日本人の賃金を上げる唯一の方法」(PHP研究所)

 

「緊縮財政」も円安の隠れた原因

なお日米金利差の縮小、日本の経常黒字の増加などからドル円レートは160円あたりがピークだと思われる。

 

円安がオーバーシュートした場合には、巨額の財政出動と金融引き締めというポリシーミックスを打ち出し、為替トレンドを一気に円高に転換するという奥の手がある。円安進行にはなんの心配もないのである。

 

そもそも拡張的財政政策とタイトな金融政策は通貨高に、緊縮的財政政策とルーズな金融政策は通貨安になるという経済学仮説(マンデル・フレミングモデル)に基づけば、米国は典型的通貨高のポリシーミックス、日本は典型的通貨安のポリシーミックスを採っていることになる。

 

強力な財政パワーを隠し持っている日本は財政出動による高圧経済化を通して容易に通貨安を止めることができる。

 

出所:原田泰「日本人の賃金を上げる唯一の方法」(PHP研究所)
[図表4]主要国の政府収入弾性値 出所:原田泰「日本人の賃金を上げる唯一の方法」(PHP研究所)

 

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武者 陵司

株式会社武者リサーチ

代表

 

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※本記事は、武者リサーチが2024年7月15日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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