兄貴、5,000万円払ってくれ…フツーの専業主婦だった母の死から一転、円満なきょうだいが大金を巡って大バトルを繰り広げたワケ【弁護士が解説】

兄貴、5,000万円払ってくれ…フツーの専業主婦だった母の死から一転、円満なきょうだいが大金を巡って大バトルを繰り広げたワケ【弁護士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

相続トラブルと聞くと、確執のあるきょうだい関係を想像する方が多いかもしれませんが、必ずしもそうではなく、相続発生以前はごく普通の関係だったというケースは珍しくありません。ここでは、普通の人でも直面するかもしれない「揉めやすい相続事例」を取り上げ、具体的な解決方法を探ります。不動産と相続を専門に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。

相続のトラブルのほとんどは、ひとつの理由に帰結する

多死社会の日本では、日々多くの「相続」が発生しており、それに伴って「相続トラブル」も増えています。トラブルと聞くと、しばしばドラマに出てくる「仲の悪いきょうだい」を思い浮かべるかもしれませんが、実際はそれほど単純ではありません。

 

ここでは、法律の場でしばしば遭遇するケースにおいて、どんな解決方法があるのか見ていきたいと思います。

 

まず、相続財産に「不動産」が含まれている場合は、かなりの確率でトラブルが起こります。

 

原因となるのは「不動産の価値」の評価です。どういうことかというと、相続人の立場によって、遺産である不動産を「高く評価したほうが有利な人」と「低く評価したほうが有利な人」が分かれることがあり、それがいさかいの原因となりがちなのです。誤解を恐れずにいうと、相続のトラブルのほとんどは、これが理由だといっていいかもしれません。

 

具体的な例をあげて考えてみましょう。

 

《相続人関係図》

 

被相続人…母親

相続人……子ども2名(長男・二男)

相続財産:

不動産:東京23区内の戸建て住宅

預貯金:少額

 

《背景と実情》

 

専業主婦だった母親が亡くなり、相続が発生(父親は数年前に死去)。相続財産は自宅不動産とわずかな現金のみ。相続人は子ども2人(長男・二男)。兄(長男)は亡くなった母親と実家で同居しており、今後もそこに暮らすことを希望。弟(二男)は、遺産分割を希望し、実家の評価額の半分を「代償分割」として受け取りたいと主張している。

 

被相続人である母親が亡くなり、相続人として被相続人の子どもが2人(兄・弟)いるとします。この場合、法定相続割合はそれぞれ1/2になります。

 

相続財産はほぼ実家不動産だけで、なおかつ、実家に同居していた兄が今後も住み続けることを希望している場合、実家の評価額の半分を「代償分割」として弟に支払う必要があります。

 

筆者の事務所は横浜市にあることから、東京近郊の案件を扱うことが多いのですが、このエリアであれば、ごく一般の家庭の不動産一戸が数千万円の評価になり、23区内となれば、億単位の評価になることも珍しくありません。

 

上記の例で、仮に不動産の評価が1億円だった場合、代償分割として半額の5,000万円を払う必要がありますが、これだけの金額を現金で支払える人は、まずいないのではないでしょうか。「兄さん、自宅を相続するなら5,000万円払って!」といわれたところで、「いや、それはムリ…」となるのが普通でしょう。

 

このように、高額な不動産の代償金が準備できず、トラブルに発展するケースはとても多いのです。

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