「株価・為替」は「噂・思惑」で動く
株価や為替レート(ドルの値段など)は、理屈通りに動かないことが多く、投資初心者は頭を抱えてしまうことも多いようです。予想が困難なだけでなく、なにが起きているのかを理解することさえも容易でない場合が多いからです。
株価などは、人々が「上がる」と思うと買い注文が増えるので実際に上がります。つまり、「上がりそうだ」という噂が流れただけで、実際に上がる場合が多いのです。それを経済学者ケインズは「株価は美人投票のようなものだ」と表現しました。
つまり「株で儲けようと思ったら、真実を知ることよりも、周囲の噂話に耳を傾けるほうがよい」ということなのですが、それを理解するためには当時の美人投票のシステムを知る必要があるでしょう。
ケインズ時代の美人投票の「特殊な仕組み」
現在の美人投票は、審査員が美人だと思った人に投票し、最も得票を集めた候補者が優勝してトロフィーを受け取る、というものです。ケインズ時代の美人投票も、そこまでは同じなのですが、優勝者に投票した審査員も景品がもらえたのです。
そうなると、審査員の行動パターンが変わってきます。自分が美人だと思う候補よりも、優勝しそうな候補に投票する方が得をする可能性が高いからです。たとえば、自分は候補Aが美人だと思っても、候補Bが登場した時に審査員たちが拍手喝采したとすれば、Bが勝つ可能性が高いので、Bに投票すべきなのです。
拍手喝采が起きなくても、周囲の審査員がだれに投票するのか、誰が勝つという噂が流れているのか、周囲の審査員に聞いてまわったほうが壇上の候補者を見つめるよりよい、ということで、みんなが噂の収集に注力するはずです。
では、「候補Cが審査員たちに賄賂を配っているから、Cが勝つだろう」という噂を聞いたら、どうすべきでしょうか。勝ちそうなCに投票すべきでしょうね。「どうして自分には賄賂をくれないのだ」などと憤ってもしかたありませんから(笑)。
問題は「噂が誤りであっても関係ない」ということです。多くの審査員が噂を信じてCに投票すればCが勝つわけですから。審査員のなかには、噂が誤りだという真実を知っている人がいるかもしれませんが、その人は「自分だけが真実を知っている」と自己満足するのではなく、やはりCに投票すべきなのです。ケインズの教えるとおり、真実より周囲の噂のほうが重要なのです。