3兄妹間で調停へ…次男・三男が“吐き捨てたセリフ”
調停に向けて次男、三男にも連絡を取り、全員が集まれる日から調停日が決定しました。
季節もすっかり変わり、桜が散り始めた頃、第一回目の調停が開始されました。私と松井さんが会場で待っていると、次男と三男が入ってきました。二人はどかっと椅子に座り、背もたれに寄りかかりながら腕と足を組んだ姿は、少し横柄な態度に見えました。
私は早めに終わらせようと早速本題を切り出しましたが、私が話すとすぐに次男が「俺らは妹と話す気なんてない。今後このような調停が行われても、俺らはもう来ないからな」とだけ吐き捨て、二人揃ってすぐに部屋から退室してしまいました。
松井さんは「やはり話し合いは無理なんかねぇ……」とひどく落ち込んだ様子でしたが、私は「確かに話し合いは今後難しそうですね。ですがここで折れてしまっては、お兄様の思いが報われません。ここは一緒に最後まで実現に向けて頑張っていきませんか?」そう声をかけました。
「……そうだね。ここまできたなら最後までやってみるかね」
ここから私たちは松井さんの思いを実現するために、改めて遺言執行者選任の申し立てをしたり、銀行や二人の兄弟を相手に訴訟を起こしたりと、次々と行動に移していきました。
その中で私は、以前に起きた、母親が亡くなった際の相続で次男と三男の思い通りにならなかったことが理由なのであれば、相続の一部を二人にも提供することでもしかしたら飲み込んでくれるのではないかとも考えました。
そこで、私は亡くなった兄の土地や家の不動産評価をしてもらいました。すると兄が所有していた家と土地は約6,000万円の評価となりました。これを次男、三男、松井さんの三人均等の三分の一ずつの配当では松井さんにとって有利にはならないので、松井さんに3,000万円、次男、三男にそれぞれ1,500万円配当する案はどうかと提案しました。
この提案をしてから数日後。次男、三男より書面にて連絡があり、この条件であれば応じるとの返答が届きました。
松井さんにこのことを告げると、「本音を言えば遺言書通り100%の相続が欲しかったけど、あなたがそれが難しい中ここまでやってくれたので、このくらいなら御の字かね」と納得した様子で話してくれました。
「法的に問題のない遺言書作成」が円満相続の鍵
今回の松井さんの件から思うこととして、結果的にお金と時間はかかってしまいましたが、リスクを取ってもご本人の意向を踏まえて動いたことで、ご本人が納得できる結論を導くことができたのではないかということです。
しかし、そもそもお兄さんが亡くなる前に法的に問題のない遺言書を作れてさえいれば、希望通り松井さんに全て相続することができたこともまた事実です。
遺言書があったからといって、相続が万事スムーズに進むわけでは必ずしもありません。この事例を読んで、あなたの遺言書に問題がないか不安に感じた方、ご家族が亡くなられてこの先の対応をどうしようと思われた方は、すぐプロに相談されることをお勧めします。
根本 達矢
弁護士
東池袋法律事務所所属
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