株主還元を「重視する米国企業」と「ないがしろにしてきた日本企業」の違い【マクロストラテジストが解説】

株主還元を「重視する米国企業」と「ないがしろにしてきた日本企業」の違い【マクロストラテジストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、フィデリティ投信株式会社が提供するマーケット情報『マーケットを語らず』から転載したものです。

日本企業のROEは高まり、株主還元にも積極的に

さらに言えば、「ROEが高い企業ほど、ROEの水準を維持するために株主還元に積極的になるインセンティブが強い」わけですから、今後、日本企業のROEが高まれば高まるほど、日本企業は株主還元に積極的になる可能性があることを示唆します。

 

加えて、今後、日本企業がROEを高めることを求められ、そのためには利益水準の引き上げのみならず、純資産を減らす必要があることを考えると、今後は、集合体としての日本企業の総還元性向が100%を超えるとみられます。

 

[図表5][図表6]に示すとおり、100%超の、ある総還元性向の水準に対して、ROEが高いほど、純資産の減少率が大きく、ROEの上昇率が高いことが示されますから、

 

今後、日本企業がROEを高めるほど、ROEの上昇率がさらに(理論上は指数的に)高まることが期待されます。

 

[図表8]株主還元実施前のROE水準と、株主還元によるROEの変化率(利益は一定と仮定)
[図表5]株主還元実施前のROE水準と、株主還元によるROEの変化率(利益は一定と仮定)

 

[図表9]株主還元実施前のROE水準と、株主還元による純資産の変化率(利益は一定と仮定)
[図表6]株主還元実施前のROE水準と、株主還元による純資産の変化率(利益は一定と仮定)

日本企業のROE上昇と、家計が気を付けるべきこと

先に述べたとおり、今後、日本企業がROEの引き上げに「突き進んでいく」ときには、確かに、マージンの引き上げが求められますし、企業はそうするでしょう。そして、マージンの引き上げは、競争を減らして販売価格を引き上げるにせよ、コストを引き下げるにせよ、家計を圧迫するでしょう。

 

同時に、企業は、増える利益を投資家に還元することを求められますし、企業はそうするでしょう。なぜなら、そうしたインセンティブが企業に(そして、もっと大事な点として、企業の経営者に個人的に)存在するためです。

 

簡単に言えば、今後、株主と企業と企業の経営者は取り分を増やし、家計と労働者は不利な立場に置かれるでしょう。

 

政治に頼れないとすれば(≒「経済の問題に政治は立ち入れない」という言い訳が強調され続けるならば)、われわれは投資家の側に回るほかないでしょう。

 

 

重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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