株主還元に積極的な米国企業と、そうでない日本企業
今後、日本企業がROEの引き上げに「突き進んでいく」ときには、マージンの引き上げが求められますし、企業はそうするでしょう。そして、マージンの引き上げは、競争を減らして販売価格を引き上げるにせよ、コストを引き下げるにせよ、家計を圧迫するでしょう。
同時に、企業は、増える利益を投資家に還元することを求められますし、企業はそうするでしょう。なぜならば、利益を還元せずに純資産として抱えると、ROE(=利益/純資産)の低下圧力として作用するためです。投資家は投資家ゆえに、「投じた資本が高いリターンを生んでいるか」を重視します。
ここで、「稼いだ利益を投資家に還元するのではなく、投資に回すことによってROEの分子である利益を増やすこと」を考えるかもしれません。
しかし、投資(≒資産の増加)は、借入の増加によっても実行できます。すなわち、資産や事業の取得・選択と、そのための負債サイドでの資本と債務の調達・構成は切り離して考えることができます。
企業は、借入も活用して利益を増やしつつ、株主還元で純資産をコントロールすることで、ROEの目標水準を達成することが求められます。
TOPIX構成企業の場合、毎期の純資産金額の増加額が毎期の利益水準とほぼ同程度であり、利益の大部分を純資産としてバランスシートに残している一方で、S&P500構成企業は、毎期の純資産金額の増加額が毎期の利益水準の半分未満であり、利益を純資産としてバランスシートに積み上げないように努めていることがわかります。[図表1][図表2]