株主還元を「重視する米国企業」と「ないがしろにしてきた日本企業」の違い【マクロストラテジストが解説】

株主還元を「重視する米国企業」と「ないがしろにしてきた日本企業」の違い【マクロストラテジストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、フィデリティ投信株式会社が提供するマーケット情報『マーケットを語らず』から転載したものです。

株主還元に積極的な米国企業と、そうでない日本企業

今後、日本企業がROEの引き上げに「突き進んでいく」ときには、マージンの引き上げが求められますし、企業はそうするでしょう。そして、マージンの引き上げは、競争を減らして販売価格を引き上げるにせよ、コストを引き下げるにせよ、家計を圧迫するでしょう。

 

同時に、企業は、増える利益を投資家に還元することを求められますし、企業はそうするでしょう。なぜならば、利益を還元せずに純資産として抱えると、ROE(=利益/純資産)の低下圧力として作用するためです。投資家は投資家ゆえに、「投じた資本が高いリターンを生んでいるか」を重視します。

 

ここで、「稼いだ利益を投資家に還元するのではなく、投資に回すことによってROEの分子である利益を増やすこと」を考えるかもしれません。

 

しかし、投資(≒資産の増加)は、借入の増加によっても実行できます。すなわち、資産や事業の取得・選択と、そのための負債サイドでの資本と債務の調達・構成は切り離して考えることができます。

 

企業は、借入も活用して利益を増やしつつ、株主還元で純資産をコントロールすることで、ROEの目標水準を達成することが求められます。

 

TOPIX構成企業の場合、毎期の純資産金額の増加額が毎期の利益水準とほぼ同程度であり、利益の大部分を純資産としてバランスシートに残している一方で、S&P500構成企業は、毎期の純資産金額の増加額が毎期の利益水準の半分未満であり、利益を純資産としてバランスシートに積み上げないように努めていることがわかります。[図表1][図表2]

 

[図表4]TOPIXの純利益と純資産金額の変化(実績値、1株ベース)
[図表1]TOPIXの純利益と純資産金額の変化(実績値、1株ベース)

 

[図表5]S&P500の純利益と純資産金額の変化(実績値、1株ベース)
[図表2]S&P500の純利益と純資産金額の変化(実績値、1株ベース)

 

次ページ株主還元に積極的な米国企業と消極的だった日本企業の違い

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