人事のプロが解説する「会社を辞める」方法
皆さんは、「退職届」と「退職願」の違いをご存じでしょうか。人事部以外の方は意外にこのあたりの違いを知らなかったりします。少し前には新サービスとしての退職代行会社が話題になりましたが、退職に関するこのあたりの知識があれば退職代行サービスを使わずともスムーズに退職できるケースもあるかと思います。
ここでは、「会社を辞める」に関する基礎知識を解説したいと思います。「辞める」のは簡単です。正確な知識があってこそ自信を持った行動をとることができます。
図表1をご覧ください。雇用契約の終了に関してまとめてみました。
退職は雇用契約の終了の一部として捉えることができますが、ここで解説するのは、解雇ではなく退職のほうです。
「退職」は、大別すると「合意退職」と「辞職(一方的退職)」に分けることができます。「合意退職」とは、企業と労働者の合意によって雇用契約を終了させることをいいます。労働者が合意退職を申し込んで企業が承諾する場合もあれば、企業が合意退職を申し込んで労働者が承諾する場合もあります。
本記事で対象とする「会社を辞めたい」は前者のケースです。一方、後者のケースとしては、企業が退職勧奨を行い、サラリーマン側がそれを受け入れるような場合がそれにあたります。
「辞職」(一方的退職)とは、サラリーマンが一方的に雇用契約を終了させることをいいます。企業が一方的に雇用契約を終了させる「解雇」と対になる概念です。契約社員など期間を定めた雇用契約は、原則として、その期間が満了した時は当然に終了しますので、この場合には、労働者または企業による特段の意思表示は必要ありません(以上は大原則であり、厚労省の告示により、雇止めに関しては一定の手続きルールが定められているので注意が必要です)。
ここからが重要なのですが、期間の定めのない雇用契約の場合(通常の正社員として働いている場合)、労働者は2週間の予告期間を置けば、いつでも辞職することができます。
「雇用契約」は、民法で定める13種類の典型契約の1つですが、民法627条に期間の定めがない雇用契約の解約の申し入れが定められています。
【民法】第627条(期間の定めのない雇用の解約の申し入れ)
1.当事者が雇用の期間を定めなかった時は、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する
退職書類の提出は、①合意退職の申込みである場合と、②辞職(一方的解約)である2つの場合が考えられるのですが、①の場合は、退職書類の提出は、あくまでも合意退職の「申込み」に過ぎないので、企業が「承諾」した場合にはじめて退職の効力が生じることになります。
一方、②の場合は、企業の承諾は不要であり、会社に到達した時点でただちに解約告知としての効力が生じることになります。①と②のどちらにあたるかについては、具体的な事実関係に応じて個々に解釈されることになりますが、一般的には「退職願」ではなく「退職届」を提出することにより、労働者において企業の意向を一切問わずに退職しようという意思が明確に伝わります。
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