(※写真はイメージです/PIXTA)

父と母、どちらかが先立つと、ひとり暮らしをさせるか同居するかなど、残された親を今後どうするか悩む子どもは多いでしょう。高齢者施設への入居という選択肢もあります。その場合、新たな課題となるのが入居にかかる費用です。本記事では石田さん(仮名)の事例とともに、高齢親の老後資金についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

入居から3ヵ月後…

石田さんはサポート付き高齢者住宅(サ高住)に入居することになりました。サ高住は自立して自分の生活ができる人であっても60歳以上であれば入居することができ、介護職員、看護職員が常駐しています。入居者の体調不良などのトラブルなどに対応することができるため、ひとり暮らしの高齢者でも安心して暮らすことができます。

 

退職金も合わせて3,000万円以上の貯金があった石田さんにとっては費用面も心配なく、息子夫婦はこれで安心と思っていたのでした。

 

しかし、それから3ヵ月後、思いもよらぬことが起きてしまいます。石田さんは「お金がなくなってしまいもういられない……」と言って戻ってきてしまったのです。

 

銀行を信じて2,400万円を消失

石田さんは現役時代からの付き合いの銀行に勧められ、「預金では増えないし……」と仕組債と呼ばれる金融商品を購入しました。この資産の運用は銀行に任せていました。仕組債とはデリバティブ取引を組み合わせて組成される債券の総称です。通常の債券は満期まで保有していれば額面が償還され、そのあいだに決められた金利が支払われるローリスク・ローリターンな特性を持つ商品です。

 

石田さんは、仕組債のなかでも対象となる株式の価格が一定の金額以上下回ると株式に転換される「他社株転換社債」という商品を購入していました。株価が一定の価格の範囲で変動しているあいだは、通常の債券投資では難しい高い金利を得ることができ、1年後には投資した金額が償還されるというものです。しかし、株価が決められた価格以上に上振れ・下振れした場合には、債券から株式へと転換されます。つまり下落している場合、債券は価格が下落した株式に転換されてしまうため、大きな損失が発生する場合があります。

 

このように複雑な仕組みから構成されている商品ですので、初心者には理解することが難しく不向きなものなのですが、石田さんは「銀行に任せておけば大丈夫だろう」と、安易に考えてしまいます。3,000万円もの金額を投資してしまった石田さんが購入した仕組債は、石田さんの予想に反して対象銘柄が大きく値下がりしてしまい、600万円ほどに株価が下落してしまったのです。

 

公的年金の受給額も月に18万円程度なので、これでは住居費用を払ったあとほとんど残らなくなってしまいます。手元資金600万円では引き続きサ高住で暮らすのも難しいと判断した長男夫婦は、さすがに石田さんを放っておけず再び一緒に暮らすことになりました。

 

自分のミスでお金を失ってしまった石田さんは、さすがに申し訳ないと思ったのか長男夫婦に気を遣うようになったそうです。

 

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