個人消費支出は伸びが縮小
2024年5⽉の⾷料品及びエネルギーを除いたコアPCE(個⼈消費⽀出)デフレーターは、前年⽐+2.6%(4⽉:同+2.8%)と、市場予想通りの結果となりました(図表5)。
内訳では、コア財(4⽉:前年⽐▲0.6%→5⽉:同▲1.1%)は、下落幅を拡⼤したものの、コアサービス(4⽉:前年⽐+4.0%→5⽉:同+3.9%)は、わずかな減速にとどまっています。
コアPCEデフレーターは、FRBの⽬標である2%を0.6%程度上回っているものの、その超過分は、帰属家賃をはじめとする住宅インフレによるものです。その他の超過分は、外⾷や娯楽などの労働集約型サービス(図表6)のほか、株価に遅⾏する形で⾦融サービス⼿数料が上昇していることも、コアPCEデフレーターを押し上げています(図表7)。
物価の瞬間⾵速を⽰す前⽉⽐では、コアPCEデフレーターは、4⽉の+0.26%から5⽉に+0.08%へ、伸びが縮⼩しました(図表8)。
FRBがインフレのモメンタムを測るうえで重視している3か⽉前⽐年率値(4⽉:+3.5%→5⽉:+2.7%)は2か⽉連続で 減速したほか、4⽉に加速した6か⽉前⽐年率値では+3.2%(4⽉:+3.2%)と横ばいとなりました。
今回の結果は、FRBのインフレ⽬標2%に向け、前向きな動きと評価できるものの、あくまでも単⽉の動きになります。FOMCが声明⽂で強調する通り、「インフレが持続的に2%に向かっているとの確信が深まる」ためには、さらにインフレ低下を⽰す追加のデータが必要になるとみられます。
5⽉のPCEデフレーターの伸びが前⽉から鈍化した点について、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は6⽉28⽇、⾦融政策が機能していることを⽰す「良いニュースだ」とし、「成⻑は鈍り、消費ペースも鈍化している。労働市場は減速し、インフレ率も下がっている」と評価したうえで、政策⾯で取り組むべきことはまだあるとし、インフレ率が2025年末までFRBが⽬標とする2%を上回る可能性があるという⾒通しを⽰しました。
また、パウエルFRB議⻑も7⽉2⽇のECB主催の フォーラムで、「(最近のインフレ指標について)インフレが再び鈍化傾向をたどっていることを⽰唆している」としたうえで、 「当局者らは利下げに動く前にさらに多くのデータを⽬にしたい考えだ」と付け加えました。
市場は、今回の結果が年内の利下げを正当化すると判断しつつ、今後2、3回公表されるインフレ指標が相応に弱いものとならない限り、9⽉のFOMCでの利下げが正当化されるハードルは⾼いとみているようです (図表9)。
また、中⻑期的な観点からは、⼤統領選挙の結果が FRBの政策判断に与える可能性も無視できません。トランプ候補は不法移⺠の取り締まりや、中国からの輸⼊品に関税を課すことなどを掲げています。こうした政策が実現すれば、労働需給の逼迫化、輸⼊物価の上昇を通じてインフレが再燃し、FRBがドットチャートで⽰した来年以降の利下げシナリオは修正を迫られる可能性があります。