都議会議員補欠選挙後に想定されるシナリオ
目先は目標達成感から利益確定売り、もしくはヘッジ売りを検討すべきと考える。来週(2024年7月7日週)のETFによる分配金捻出売りや例年の夏枯れ相場が近いという季節性などのマイナス材料があるが、筆者が一番のリスクだと思うのは「政治リスク」である。
7月5日の英国総選挙ではない。今度の7月7日の選挙だ。フランスの議会選挙でも、ましてや、東京都知事選などではない。フランスの議会選は民主主義の観点から非常に注目しているが、都知事選のコメントは控える。筆者が注目し、かつ最大のリスクだと思うのは、東京都議会議員の補欠選挙である。都知事選と同じ7月7日に投開票される。補選は、江東、品川、中野、北、板橋、足立の6区と八王子、府中の2市、稲城・多摩両市の南多摩の計9選挙区である。
都議会(定数127)の現有勢力は、自民27、都民ファ25、公明23、共産19、立憲15(以下省略)。対象選挙区の9つの議席は、自民5、都民ファ2、無所属2だった。自民が最大会派を維持できるかが今回の補選の焦点となる。9選挙区のうち自民が公認候補を擁立した8選挙区は、いずれも国政野党系の候補らと争う構図となった。勝敗はその地域の衆院選選挙区の情勢にも影響する。
注目は、不記載事件で党の役職停止1年の処分を受けた自民の萩生田光一前政調会長の地元の八王子市選挙区。同じく不記載事件で党員資格停止1年の処分を受けた下村博文元文部科学相の地元・板橋区。
仮に、ここで2議席落として、都民ファが一つでも議席を増やせば、都議会の最大会派の座を自民党は失うこととなる。「自民惨敗」とメディアは報じるだろう。問題はそうなった場合、「岸田降ろし」が強まるなか、9月の自民総裁選に向けての動きも活発になるということだ。岸田さんがいいとか悪いとかでなく、相場にとっては「不透明感」「不確実性」が常に最大のリスクである。
つまり、これまで安定してきた日本の政治リスク・ファクターのレベルが一気に高まるということであり、無論、相場にとってマイナスである。
ないとは思うが衆院解散・総選挙の思惑にもつながる。そして、極めて確率の低い話だが政権交代のリスクまで取り沙汰されるようになると、原発再稼働が絶望的となり、日本の経済安保での立ち位置も見直され、海外からの投資マネーにも影響する。
あくまで連想ゲームの域を出ない話だが、相場というのは先の先まで読むものだ。そのきっかけのひとつになりかねないのが、今度の補選である。
売れるうちに利益を確定しておくのが得策だろう。買い戻すチャンスは夏場から秋にかけて、まだいくらでもあると思う。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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