節約しまくって貯めた老後資金、パッと気分よく使えない理由
6月とは思えない暑さが続く今日この頃だが、止まらぬ円安で一般庶民の懐は涼しくなる一方だ。バブル時代を享受し、かつては海外旅行に行きまくっていたシニアたちも、この状況では、海外に繰り出す気力も資金力もない模様。
60代の佐藤さん夫婦(仮名)は嘆く。
「うちは共働きでして、年金は夫婦合わせて月38万円。自宅もあり、経済的には困っていません。ですが、気持ちが楽になることはありません…」
と晴れない顔だ。
「93歳の夫の母を在宅介護しています」
夫が定年退職してすぐ、高齢の夫両親が相次いで要介護に。夫は二男だが、70歳の長男は配偶者をすでに亡くしており、賃貸物件にひとり暮らし。とても高齢の両親の介護に手が回らない。そのため、二男夫婦に介護が回ってきたのである。
「2年前、90歳だった父親を見送りました。いまは母親を見ています」
夫の母親には認知症の兆しもなく、受け答えはしっかりしている。だが、年齢相応に体は弱っており、生活全般に介助が必要だ。
「われわれはまだ体力があり、頑張って貯めたお金もあります。老人ホームという選択肢もあるのだと思いますが、母はいま90歳。正直、いつ何があるかわかりません。この状態で老人ホームに入れるというのは、あまりにも親不孝なのではないかと…。」
国立社会保障・人口問題研究所の『第7回全国家庭動向調査 報告書』によると、妻の年齢が 70歳未満となる世帯を対象として、親と同居している世帯の割合は15.6%。また夫、または妻の母親と同居している割合は13.3%。
この調査は5年ごとに実施されているが、親との同居割合の推移をみると「2008年」に26.6%、「2013年」に31.5%、「2018年」に19.8%、「2022年」に15.6%と低下傾向ではあるが、それでも現状、7世帯に1世帯程度は親と同居する世帯があるのだ。
また、年齢別に親との同居割合をみると「20代以下」が7.9%、「30代」が9.3%、「40代」が14.4%、「50代」が18.4%、「60代」が20.5%と、年齢が上がるにつれて親との同居割合は増えていく。
理由はやはり「親の介護問題」である。