日銀を利上げに駆り立てる唯一の理由
話を日銀に戻すと、こんな状況で利上げなどしている場合だろうか。
インフレは月次統計が出るたびに着実に伸びが鈍化しているが確認できる。景気は悪く、インフレは鈍化、海外の主要中銀はみな利下げモード。こうした環境で日銀だけが利上げに動く理由はひとつもない。いや、ただひとつだけ理由がある。だからこそ日銀は利上げの時期を探っているのだ。
日銀を利上げに駆り立てる唯一の理由――日銀が利上げしたいからである。彼らは、世界のなかで彼らだけが「異常な」金融政策を続けていたことが、嫌で嫌でたまらなかった。一刻も早く、「正常な」金融政策に戻したくてしかたがないのである。なぜなら、日銀の人はトップエリートだ。そういう人が「異端」「異常」のレッテルを貼られることには耐えられない。これが金融政策正常化を錦の御旗に掲げる理由である。
利上げは日銀によって自己目的化されている。日銀は、自分たちの都合で、自分たちがそうしたいからという理由で、利上げしてもよい、というわけではないのは、言うまでもない。そんな中央銀行を持ったこの国は不幸である。足元の経済情勢に逆行するような金融政策を志向するような国の株は、誰も買いたいとは思わないだろう。Me, too. と書いたら英作文で×になる。Neither do I である。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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