(※写真はイメージです/PIXTA)

銀行(信用金庫等を含む、以下同様)が世の中の役に立っているのかを知るために、本稿は「銀行がなかったら何が困るか」を考えてみることにしましょう。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

預金にも貸出にも活用される「大数の法則」ってなんだ?

コインを2回投げても表が1回とは限りませんが、2万回投げると概ね1万回は表が出るのだそうです。これを統計学では「大数の法則」と呼んでいます。銀行のビジネスは、じつはこれを利用しているのです。

 

個々の預金者が預金を入金するタイミング、預金を引き出すタイミングは予測できませんが、100万人の預金者がいれば、たとえば毎日概ね1万人が入金し、概ね1万人が引き出すと予測できるので、金庫にそれほど金がなくても大丈夫なのです。

 

大数の法則を知らなければ、「ある日、預金者が全員預金を引き出しに来るかもしれない。預かった金は貸出にまわさず、金庫に積み上げておこう」ということになり、貸出ビジネスが行なえないでしょうが、実際には大丈夫なのです。

 

もっとも、例外はあります。「取り付け騒ぎ」です。「あの銀行は倒産しそうだ」という噂が流れると、預金者が一斉に預金を引き出しに来るかもしれません。それを恐れていると銀行は貸出ができなくなってしまいます。それでは困るので、「取り付け騒ぎが起きたら日銀の現金輸送車が助けに来る」ことになっています。だからこそ銀行は安心して貸出ができるのです。

 

貸出面でも大数の法則は役に立ちます。たとえば「100万社に金を貸せば、概ね1万社が借金を踏み倒す」といったことが予想できるならば、すべての借り手に1%だけ金利を上乗せして貸せばよいからです。

 

もっとも、貸出面にも例外はあります。残念ながら、バブル期の銀行の貸出は「不動産購入資金」に偏っていました。多様な貸出を行っていれば大数の法則が成り立つのですが、貸出先が偏っていたために、不動産価格が下落したことで銀行は巨額の貸し倒れ損失を被ってしまったのです。

金融は経済の血液、銀行は経済の心臓

銀行が経済に役に立っているということは、普段はあまり意識していないでしょうが、ひとたび銀行の機能が低下すると、皆が困ってしまい、銀行の有難さを痛感するようになります。血液が止まった場合と同様です。

 

バブル崩壊後の金融危機で銀行が「貸し渋り」を余儀なくされた時に、銀行が世の中の役に立っていることを認識した人も多かったのではないでしょうか。当時銀行員であった筆者は、なんとも言えない気持ちでしたが。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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